小説
□雨宿り。
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「ケイスケ遅いな………」
どしゃ降りの空を見ながらアキラは呟いた。
今朝、非番ながら早起きをして、天気予報を見ていたケイスケが傘を持っていけとしつこく言っていたのを思い出す。
しかし、昨日ケイスケと身体を繋げたおかげで寝坊したアキラは、ケイスケの忠告をまともに聞かず出ていってしまった。
扉を開けた直後に聞こえた言葉。
『雨が降ったら迎えにいくから待ってて!』
今現在。
こうしてケイスケの言葉通り待ち続けるしかない自分が情けない。
自業自得。
まさにこの言葉が胸に突き刺さった。
「アキラ、どうしたんだ?」
後ろから声をかけられ振り向くと、帰ろうとしている先輩達がいた。
「ちょっと…………」
言葉を濁すと、先輩達がからかうように話しかけてくる。
「お前、傘忘れたんだろ〜?で、旦那さんのお迎えを待ってると」
「………っ、違います!!!」
違わないのだが、『旦那さん』という言葉に激しく反応し、否定してしまう。
「今、帰る所でしたので!お疲れ様です!」
どしゃ降りの中、傘もささずに走り出す。
「おい、アキラ!?」
「バカ、お前からかいすぎだ!」
後ろの方で先輩達が引き止める声がするが、構わずに走り出す。