過去拍手文
□年越し拍手文(※)
1ページ/1ページ
「アキラ」
「………な、何だよ………」
年越しそばを食べ終え、年末のテレビ番組を見ている最中、突然にケイスケが正座して真面目な顔でこちらを向いてきた。
そんな風に改まって見つめられると、どうすれば良いのか分からなくなってしまう。
仕方なしに、アキラもケイスケを真似て、正座しながら彼を見る。
すると、ケイスケがいつもの優しい笑みを浮かべてくる。
「アキラ、今年もお世話になりました」
そう言って礼儀正しく頭を下げる。
何を言われるかと軽く覚悟していたので、拍子抜けしてしまう。
けれども相手は本気のようで、一年間の思い出や沢山の事を思い出しながら話しているのだろう。
表情は本当に、幸せで満ち足りた顔をしている。
「アキラ………俺、本当に幸せだった。毎年幸せなんだけどさ、やっぱりアキラがいてくれたから、こんなにも満ち足りてるんだろうなって毎年認識させられる」
そんなの、こっちだって一緒だ。
ケイスケがいなければ、今の幸せな想いは無い。
言葉に表すのはまだ得意ではないけれど、今なら少しだけこの気持ちを伝えられる気がする。
頬に、ふわりと唇を当てる。
「俺だって……………ぁ、りがとう………………」
部屋中に甘い空気が漂う。
この空気を知っている。
そして、その先に待つ行為も。
自分からこの空気を誘ったとはいえ、さり気なく視線を避けると顎を掴まれ無理やりに視線を合わせられる。
「っ!………ケイ、スケ!やめろ……!」
「嫌。もっと、アキラを見たい。アキラを感じたい………」
耳元に、熱い吐息を吐かれ身震いする。
心の中でバカ、と呟きながら唇を合わせ、ゆっくりと床に背中を預けた。
「っあ、ぁ、あ……ひ…ん…………」
ずん、と下から押し上げられ押し殺した声が漏れる。
「っも、ゃ、だって………ふ、ぁあっん………」
何度も内壁を擦られ、雄はやわやわと愛撫され、ただアキラはケイスケに翻弄されていた。
「アキラ、アキラ…………!」
揺さぶられながらも、ケイスケの声だけはしっかりと聞こえる。
あまりに必死で切羽詰まった声に笑みが溢れる。
愛おしくて愛おしくて、髪をくしゃりと掴み、自分に引き寄せキスをする。
それが引き金となったのか、腰使いが一層激しくなる。
「っあ、………あ!も、ぃ……………ぁあっ!」
我慢も限界を越え、背を思い切り反らし熱を解放する。
一拍遅れ、ケイスケも射精したのだと、内側に感じる熱で分かった。
これから初詣もあるから決して激しいセックスでは無かったが、今年最後の交わりは、これ以上ない満足感を二人に与えた。
抱き合って息を整えながら頭の隅で考える。
来年も、こうして肌を合わせるのだろうか。
来年も、愛を囁き合うのだろうか。
来年も、二人で手を取り合って生きていくのだろうか。
二人だけじゃない。
工場長も、先輩も、最近は連絡を取れていないがリンや源泉も。
皆どこかで繋がって、こうして誰かと生きているんだ。
これが、縁というものなのだろうか。
こうした事を考えるようになったのも、ケイスケがいたから。
そうやって成長しながら一年一年重ねて生きる。
「アキラ」
「……ん?」
髪を梳かれる感触が心地よくて、目を閉じながら返事をする。
「愛してるよ」
「………バカ」
恥ずかしいが、素直にその言葉が嬉しい。
「落ち着いたら、初詣行こうね。除夜の鐘、聞けるかな」
「そうだな。けど、聞いた所でお前の煩悩は消えないだろ」
「酷いな、アキラ」
笑い合いながら、数時間後の来年の話をする。
「ねぇ、アキラ。帰ったら姫始めしよっか」
「ひめはじめ?何だそれ?」
「後で分かるよ」
「?………そうか」
気にはなったが、ケイスケが幸せそうだからまぁいいかと納得する。
過ぎていく年を思い返しつつ、来年も幸せであって欲しいと祈る。
きっと、幸せでいられるだろう。
ケイスケと、共にいられるならば。
end