過去拍手文

□クリスマス限定拍手文(※)
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十二月…………今年も間もなく終わりが近づいてきている。

今日は二十四日。
クリスマスイブ。

人々は街の美しいイルミネーションやクリスマスツリーを見ながら楽しそうに微笑んでいる。

そんな中一人、笑顔など微塵もないしかめっ面でアキラは街を歩いていた。

ここ数年で日本も大分電気が復興した。
去年のイルミネーションもなかなか綺麗だったが、今年はそれを上回る美しさで輝いている。
しかし、今のアキラにはそんな物は関係なく、ただただ思考を巡らせていた。

「プレゼントって………何がいいんだ………」

別段ケイスケが言ってきた訳ではない。
けれども毎年毎年ケイスケはアキラにプレゼントをくれる。
しかしアキラはイベントやは何やらに拘らないタイプなので、いつも貰ってから後悔する。

ケイスケは別にいいよ、と笑ってくれるがそれではこちらの気が済まない。
だから今日はこうしてプレゼントを探しに街へ繰り出したのだが、何一つ思いつかない。


そういえば、ケイスケの好きな物…………何も知らない…………。


今までケイスケの事はある程度分かってるつもりだった。
けれども蓋を開ければ彼の事など何一つ知らない。

そう確信した途端、激しい落胆がアキラを襲った。

何と切ないのだろう。
人の事を知らないというのがこんなに胸を痛めるなど思いもしなかった。

プレゼントは………結局やめる事にした。
こんな自分がプレゼントを買っても、ケイスケに対し失礼に当たる。
そう思ったから。



ただの虚しさを抱えながらとぼとぼと家路を歩く。
すると、前方から何やら怒鳴りながら歩いている女性がいた。
今はまだ貴重な携帯を持って通話しているようだ。

「どうして、クリスマス一緒にいようって言ったじゃない!」

他人の話を聞く趣味はないがその声は恐ろしく大きく嫌でもこちらまで聞こえる。

「プレゼントなんていらないわよ!一緒にいてくれるだけでいいのに…………」

『俺には、アキラが一緒にいてくれる事が何よりのプレゼントなんだよ』

かつてケイスケが言った言葉を思い出す。

「ねぇ、お願いだから…………」

女性は段々と涙声になり始める。
けれども既にアキラにはそんなのは聞こえていない。

アキラにとって一番嬉しいプレゼント。
物を貰えるのは確かに嬉しい。
それはいつまでも記憶に残り、記念になる。
けれどもそう感じる事ができるのは他でもない、ケイスケがいるから。

ケイスケも、同じ気持ちなのだろうか。

「…………なんだ、始めからケイスケは言ってたのか」

自分の鈍さに苦笑する。

当たり前だったから気づかなかった。

いつものように二人で笑ったり泣いたり出来る。

それら全ては、ケイスケがいなければ成り立たない。

いつだってケイスケは与えてくれていたんだ。

そして自分も知らないうちに。

帰ろう。ケイスケが待っている。

最高のプレゼントが待っている家に。





end
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