パラレル部屋

□マーメイドアキラ第二話
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鼻腔を、甘いような匂いが掠めアキラは目を開ける。
見知らぬ景色に一瞬驚くが、昨日の出来事を思い出し此処がケイスケの家だと認識する。
未だ夢見心地なアキラは、思わず自分の足に触れる。
まるで自分の物ではないようなそれを、不器用に撫でていると、甘い匂いがする方からケイスケが顔を出す。

「あ、アキラ。おはよう」

「……おはよう」

どうにも挨拶は慣れない。
はにかみながら挨拶をすると、アキラの好きなケイスケの笑顔が返ってくる。

「朝ご飯出来てるよ。食べよっか」

こくり、と頷きテーブルまで這って移動する。
ケイスケが用意してくれた皿に入った料理をまじまじと見つめる。

「これは何ていう物なんだ?」

黄色い何かが、何かを巻いている物。
初めて見る食べ物にアキラは怪訝な視線を向ける。

「オムライスっていうんだよ。卵でケチャップライスくるんだ料理」

「へえ」

正直、説明はさっぱりなので適当に受け流す。

「はい、これはスプーン。これでオムライスを食べるんだ」

一通り説明を終えるとケイスケが両手を合わせて「いただきます」と言う。
アキラもそれに倣う。

食べ方も、ケイスケを真似ようとスプーンをオムライスに刺すが、なかなか掬えない。
ポロポロと中身が飛び散り段々アキラが苛立ってくると、ケイスケが盛大に笑う。

「……何だよ」

「ごめんごめん。アキラ、赤ん坊みたいだなって思ったら……つい………」

耐えきれなくなりまた笑い出すケイスケ。
しかし、笑われるこちらは全く良い気分ではない。
スプーンを手放そうとすると、ケイスケがそれを制する。

「大丈夫。俺が教えてあげるから」

さっきまで子供のように笑っていた顔が急に精悍な顔に変わり、ドキリとする。

ケイスケが背後に回り、正に手取り足取り教えられ、漸くオムライスを口に含む。
口内に広がるフワリとした感触と甘味。
今まで、こんなに美味しい物を食べた事がない。

「……………美味い」

思わず口にすると、背後から嬉しそうな声が聞こえてくる。

「本当!?」

「ああ……ケイスケは凄いな」

後ろが何やら騒がしいが、構わずアキラはオムライスの味を堪能する。
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