パラレル部屋

□マーメイドアキラ第二話
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ケイスケにしっかりと抱かれながら、彼の家に向かう。
こうして密着しながら歩いていると、何だか心臓が早鐘を打ってしまう。

ケイスケの腕は、こんなに逞しかっただろうか。
自分を支える腕にそっと触れる。
温かくて、堅くて、優しい匂いがする。

意識してしまうと一気に頬が熱くなる。

「ケイスケ……自分で歩く」

「え?でもアキラ………」

「いいから……っ…!?」

思わず腕を振り払うと、その衝撃で倒れそうになる。
来るべき衝撃に思わず目を瞑るが、地面に叩きつけられる寸前、温かい何かに引き寄せられる。

「うわ!?」

鈍い音が聞こえると同時、ケイスケの情けない声も聞こえる。
恐る恐る目を開けると、視界が真っ白だった。
少し視線を上げれば茶色の瞳が柔らかくこちらを見ている。

「ケイ……スケ……」

「アキラ、大丈夫?」

大丈夫も何も、アキラは無傷だ。
倒れる直前に、ケイスケがアキラと地面の間に入り込む気転を見せたのだ。
むしろ、ケイスケの方が体を痛めてしまっているのではないか。

「大丈夫だ。それよりお前は…………?」

「俺?全然大丈夫だよ」

にこりと笑んでみせるが、硬い地面に倒れたのだ。
痛くないわけがない。

「悪かった………」

「だから、全然大丈夫だから」

そう言って、ケイスケはアキラの脇と膝裏に腕を差し入れ立ち上がる。

「!?…っケイスケ…いいって…!」

「だーめ。また倒れたらどうするんだよ」

暴れようとした瞬間にそう言われては、アキラもどうしようもなくなってしまう。
そんなアキラを見て、ケイスケが噴き出す。

「………笑うな」

居たたまれなくなり、ケイスケの胸元に顔を埋める。

心音が聞こえる。
今にも破裂しそうな位、早くて力強い。
この音は、自分が発してる物なのだろうか?
それとも…………。

その音が、あまりに心地よくて思わず目を閉じる。
意識が………遠のく。
次目を開けたら、ケイスケはいてくれるだろうか?
これが、都合の良い夢だったなんて事はないだろうか……?

そんな不安を感じながらも、疲労が溜まった体は包み込んでくれる温もりに身を任せ、意識を沈ませていった。
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