2PM

□朝が来る前に
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仕事が終わった。
予定より3時間も延びてしまって、スタジオから外に出たら、もううっすらと空が明るくなっていた。

マネージャーに促されるようにして車に乗り込んだ私は、シートにもたれ掛かって目を閉じた。



また、約束破っちゃった。


こらえたつもりだったのに、
涙がにじんでくる。


今月何回目だろう。
2月ももう終わりそうなのに、
一回も顔見れてない。


簡単に会えないのも、
秘密にしなきゃいけないことも、
始めからわかってたはずなのに、
どうしても会いたくなる。


携帯を開いたら、
「遅くなってもいいから連絡ちょうだい」
とだけ書かれた飾り気のないメールが届いていた。



思わずすぐに電話をかける。
何回かコールが鳴ったあと、
電話の向こうからぶっきらぼうに、もしもし、と声が聞こえた。



「あ、」

「待ってた」

「ごめんね、仕事押しちゃって」

「そう思ってたよ」

「ごめん」

電話越しに聞いた変わりのない声に安心したら、涙がこぼれていた。


「名無しさん今どこ?」

「もうすぐ宿舎着くとこ」

「今から行くよ」

「仕事大丈夫?」

「今日午後からだから」


ちょっと、
続きを話そうとしたら、すぐに電話は切られていた。



しばらくして、ジュノは私の宿舎に現れた。


「寒かった、外」

「あの・・ごめん、今日」

「名無しさん、ごめんは言わないって約束だったよね?」

「だって、」

「俺も約束どうしても仕事で守れないときあるし、名無しさんのせいじゃないし」

「うん、」


ジュノは隣に座って私を抱きしめた。


「今日は会えただけ、よかったよ」


抱きしめられて、改めてジュノの体温を感じる。



「もう、ジュノと会えないかと思った」


子供みたいに泣く私の頭を撫でてくれる。


いつもは私のほうが大人なのに、こうゆうときに頼れるところが、ずるいって思ったりする。


「ジュノ、あのさ」

「うん?」

「私、ジュノのこと好き」

「知ってる」

「なにそれ」

「じゃあ、キスする?」

「なんで突然?」

「だって俺ら両想いなんだからいいでしょ」

「・・・まあね、」

「あー、なんか今日は名無しさんからしてほしい気分かも」

「・・もう・・、じゃあ覚悟して」


わざとらしくとがらせたジュノの唇に触れるだけのキスをすると、
お返しみたいにまた、キスをされた。


もうすぐ、朝が来る。
また、目まぐるしい一日が始まると思うと眩暈がした。

でも、今だけは何も考えずに、
目の前の恋人と抱きしめ合っていたい、そう思った。













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拍手ありがとうございました!
次回もお楽しみに!
 

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