2PM

□HAPPY BIRTHDAY 0211
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この前買ったワンピースとコートを着て、マフラーをぐるぐるに巻いて、いつもよりちょっとだけがんばってお化粧もして。


地下鉄の窓に映った顔を見たら、なんだか浮かない顔をした自分がいた。


昨日まではドキドキして眠れなかったのに、
今朝になったら、なんだか、複雑な気持ちになっていた。


きっと、緊張してるだけ。
そう言いきかせるようにして、

人の流れに乗って外へ出ると、
雪がちらちらと舞っていた。



せっかく昨日まで、春がきたみたいな天気だったのに、
頬にしみるみたいに冷たい風が当たる。




チャンソンがいたら、
きっとあたしの顔に手を当てて、暖めてくれただろうな、なんて考えてしまった。




寒さに耐え切れなくて、急いで近くのカフェに入る。

まだ時間がありそうだから、少しここで温まろうと思って、
奥の席に座った。



また、思い出しちゃった。

思い出すのは、チャンソンもあたしも笑顔の記憶ばっかり。




別れて、もう半年くらい経って、
もう電話番号もわかんなくなって、連絡することもできなくなった。


これが私たちの運命だったのかな。

きっとその程度だったんだ。
そう思うしかない。





2人でいて、楽しいことばかりじゃなかったし、
ケンカも多くて、
だからあたし達はやっぱりもとから合わなかったんだよって、

あたしが説得するみたいに、
別れた。




そんなはずだったのに、
悔しくなるくらい、会いたくなる。






「名無しさんなんで、」


「決めたの、もうこれ以上嫌な思いもしたくないし、
これ以上、チャンソンのこと、
嫌いになりたくない」


「大丈夫だから、俺のこと、信じてよ」


「無理、だよ」








チャンソンが浮気した。

きれいな女の子と笑って歩いてるのをちょうどあたしが見ちゃって、




言い訳なんか聞けなかった。

違うって言われるたびにつらかった。


あたしに、嘘なんてつけるような、器用な人だなんて思ってなかった。


前みたいなあたし達には戻れないだってわかった気がした。



後から、
誤解だったってことがわかったけど、だからって、また関係を戻そうなんて思えなかった。


きっと、別れるのが運命だった。

占いとか、そうゆうのは信じないほうなのに、
なんとなく、そう納得していた。






ほんと、馬鹿みたい。


くやしい。
せっかく、チャンソンのことなんて忘れて、新しい恋ができそうだと思ったのに。

また思い出すなんて。



心のどこかで、過去を引きずってるなんて嫌なのに。

そんな気持ちを消すように、
カプチーノをひとくち含んだ。




その時、













「名無しさん…?」







はっとした。


久しぶりなのに、
聞き慣れた声がしたから



もしかして、そう思って振り向くと、やっぱり、チャンソンがそこにいた。







「名無しさん、久しぶり、だね」




「うん、」



「誰かと、待ち合わせ?」




「まだだったから、ちょっと時間つぶしてた。チャンソンは?」




「俺は、ちょっと息抜きに」



なんて話そう、

そんなこと考えていたら、
チャンソンが先に口を開いた。





「ここ、座っていい?」






向かいの席を指さされて、
ただ、頷いた。





「なんか、変わったね、可愛くなった?」



「なにそれ、」



「いや、ほんとに」



「そうゆうのうまいよね、前から」


「待ち合わせって、彼氏?」



「突然、そんなこと聞くんだ。もっとないの?元気だった?とか何してた?とか、自分の近況とかさ」




「俺は、名無しさんがいなくてつらかったよ」



「・・・え?」

思いがけない言葉に、声をあげてしまった。

「あれから考えたんだ、名無しさんに俺がどんなふうに接してたのかとか、何をしてあげられたのか、とか」



「考えてさ、俺、名無しさんが優しいのに甘えてたって思って。」



「名無しさんがしたいこととか言いたいこととか、いつの間にか我慢させてたんじゃないかって」






「お願い、もう一回付き合ってください。今度はもう、絶対つらい思いとか、させないから」



涙がもう、流れてしまいそうだ。
こらえながら、ゆっくり強く、
瞬きをした。








「今日も、考えてちゃってたんだよ、チャンソンのこと。」



「名無しさんほんとに?」



「今日のデートの約束、断らなきゃ」



「俺がちゃんとその彼に電話するから」



「お願いね」





しっかり、チャンソンの顔を見たら、
また泣きそうになってしまって、慌てて、携帯を見るふりをした。












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