2PM

□悲しみにさようなら
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何だか、目覚めの悪い夢だった。

目の前には、テギョンの肌と、小さな寝息が聞こえて、すこし安心した。
ぐっと、テギョンの鎖骨あたりに顔を押し付けてみる。

なんだか、ものすごく、泣きたくなった。


私は、幸せだ。
テギョンがいつもそばにいてくれている。
こんな毎日なんていらないって思っていた私に希望をくれたんだから。
どん底で真っ暗な世界が、一気に明るくなった。

なのに、どうして、こんなに泣きたくなるんだろう?

あんなにつらかったのに、また、あいつの声を探している。

呼吸が少し苦しくなる。
こらえられなくなって、涙が流れた。

どうしてなんだろう。
あいつは、私の記憶の中に、いつもどこかに存在していて、
あの、笑顔で笑いかけてくる。

どうしろって言うの?
私がなにも言わないで、そばにいればよかったの?

考えても考えてもどうしようもないことなのに、
そう分かっているのに、泣くことしかできない。

突然、テギョンの腕が私の背中に回って、ぎゅっと抱きしめられた。

「どうしたの?」

顔は見えないけど、やさしい声。
たぶん、相当心配してる。


「なんでもない、悪い夢見ただけ」

鼻水をすすって、へへって笑ってごまかそうとする。

泣いてる顔を見られるのが嫌で、テギョンから離れて、寝返りをうつみたいに反対を向いた。

「名無しさん」

「うん?」

「俺は、暇があれば名無しさんのことずっと考えてるような男だよ?」

「なに?」

「ほら、こっち向いて、」

肩に手を置かれたけど、首を横に振った。
テギョンの手の温度と、力強さを感じる。

「名無しさんの下手くそな嘘ぐらい見抜ける」

まだテギョンの手は私の肩に置かれたままで、
力が強まることも弱まることもない。

「テギョン」

「俺もさ、だいぶ大人になったと思わない?名無しさんと付き合った頃は、なんとなく学生みたいなノリで、彼氏彼女みたいな関係だったけど。今は、大人の余裕みたいな、」

「なにそれ、」

呆れたみたいに笑ったら、「顔見せてよ」って言って、体を元の位置に戻された。
至近距離で、テギョンと向き合う体勢になる。

親指で私の涙を拭ったテギョンの手は、そのまま、私の顔に添えられた。
間接照明のオレンジ色の明かりが彼を映し出している。

はっきりした目鼻立ち、凛々しい顔つき、筋肉質な腕。

見とれてしまうみたいに見つめてしまった。

「そんな顔で俺のこと見ないでよ」

「だって、」

「もう一回したくなる」

「やだ」

「ごめん、冗談だって」

「ほんとは半分本気なんでしょ?」

「なんでわかるかな」

照れたみたいに目線を外して笑ったテギョンは、もう一度をしっかりと私を見つめて、キスをした。

とろけそうになるくらい、熱が上がる感じがする。
唇が離れた後でも、まだ、感触が鮮明に残っている。

「テギョンのキスってなんかやらしい」

「そうゆうこと言う方がエロいんじゃないの?」

「うるさいな、だってほんとのことだもん」

テギョンは仰向けになって、はぁ、とため息をついた。

「そんなに嫌だった?」

「違う、名無しさんが笑ってくれたから。安心のため息。」

いつの間にか、笑顔になっている自分がいた。

あんなに苦しかったのに、ほんの数分の間に、笑わせてくれるテギョンの存在ってすごいのかもしれない。


「なんか、前は焦ってた。名無しさんに会いに来るのにも、セックスするにも。名無しさんがいなくなったら…ってことばっかり考えてた。」

「私がいなくなる?」

「ほら、前に、兄さんのこと…、時々思い出すって言ってただろ?」

「……」

「正直、怖かったんだ。勝てる自信がなかったから。兄さんと俺って結構対称的だからさ」

「なんか、私のせいで、そんなこと考えさせちゃってたなんて知らなかった。」

「でも、今は、負けないって自信がある。なんか、負けたくないっていうか。だから、俺には何でも言ってほしい。こんなに近くにいるのに、何も言い合えない関係って最悪だと思うから。」

「うん。」

「俺はどこもいかないから。ね?」

はっきりと目が合った。
いつでも笑顔で迎えてくれる大切な存在が、私にはいるんだって、改めて感じた。


「テギョン、すき」

「はいどうも。その言葉待ってたよ」


この先もずっと、ずっと一緒にいられるのがいい。
ずっと、ずっと、きっと。
















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