短編小説

□くだらない話
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そして、今日の俺はというと・・・


休日で仕事も休みだし、午後まで思う存分眠ってやろうと、有意義に睡眠を貪っていたのだが・・・



ガシャン!!

「痛っ!!!」


体が揺れる感覚と、とてつもない衝撃に、自分の叫び声と共に目が覚めたのだった



「うわ!ビックリした・・・今揺れたよね?!」
「うん!怖かったぁ!!」



開けていた窓の向こうから聞こえて来た声を聞いた後、自分に降りかかった衝撃の原因である、足元に転がった自分の趣味ではない掛け時計に目を止めた



すると、ピンポンピンポンと、何度もインターホンを鳴らす音が部屋に響き渡り、急いで玄関へと向かった



「はい?」
「あ!こんにちは!隣の者ですけど、凄い音しましたが大丈夫ですか?」
「あ、はい。お騒がせしてすいません」
「いえ、ちょっと心配になったもので・・・」


そう言うと隣人と名乗った女は、音の原因を探るように部屋の中をチラリと覗き見ようとしたが、玄関に続く扉を閉めてきたのでそれは叶わず心配顔を再び向けてきた



その行動に、あまり見回されたくなかったので、自分から音の原因を話す事にした



「さっきの揺れで飾っていた物や時計が落ちてしまいまして」
「ああ。なるほど・・・大丈夫でした?」
「ええ。全て傷一つ付いてなかったんで、全然問題ないです。わざわざすいませんでした」
「いえいえ。そういえばお久しぶりですね」
「え?」
「え?」
「あ、すいません。俺記憶がなくなってて、覚えてないんです」
「そうなんですか!?何があったんですか?」
「それも覚えてなくて・・・」
「そうなんですか・・・すいません。そんな大変な事になってるとは知らなくて」
「いやいや、生活には問題ないので」
「何か困った事があったら言って下さいね!お手伝い出来る事なら協力するんで」
「ありがとうございます。こんな素敵なお隣さんの事覚えてないなんて、ホント勿体無い!」
「あははは。また思い出してくれれば良いですよ。それじゃあ私はこれで」
「はい。気に掛けてもらって本当にありがとうございました」



そうして、ひとしきり会話をして隣人の女は帰っていった


「ふぅ・・・」



鍵をしっかりかけた玄関扉を背に、盛大な溜め息を一つ吐いた後寝室に戻り、先程落ちてきて電池カバーが外れた時計を拾い上げた



ああ、そうだったなーーー



さっきみたいな思いっきり叩き落とされるくらいの衝撃がなければ気付く事はなかった


時計に仕掛けられていた小型の盗聴機を視認し、そっともとあった場所に戻して身支度を整えた



強い衝撃で記憶が戻るって本当にあるんだな・・・


まるで他人事のように思いながら家の鍵を閉め、ある場所へと向かったのだった
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