短編小説
□LaznaS ーラズナスー
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2つのソファーで挟んだテーブルの上に置かれた、1〜3までの数字しかない電光ルーレットを、俺達3兄弟は見つめていた。
「1…2…3…1…2…3……1!1だよ!ミザ!」
矢印の差す数字を呟きながら見つめていた次男のイワが、数字が決まった途端嬉々とした様子で俺の座っているソファーの背もたれに手を置き、飛びはねながら更に言葉を続けた。
「ミザの番だね!」
なんつー満面の笑みで言ってくるんだこいつは
キラキラという、効果音を付けても余りある程の無邪気な笑顔を向けてくるこの弟に、俺は徐々に積もっていた不満を口にした。
「俺の番ってか、ずっと俺しか当たってないんだけど?」
「ね!凄いよ!強運の持ち主なんじゃない?」
俺の不満を気にも止めず、飄々とした態度でそんな事を言う。
「裏を感じるんですけどー」
「ちゃんと見てよ。1に止まってるでしょ?!決まった事に文句言わないでよ。キカなんて結果が出た途端どっか行っちゃったよ?」
ルーレットを見ていたもう1人、末っ子のキカが、静かに出て行った扉を指差しながら言った。
相変わらずマイペースだな
俺達三兄弟は、三つ子なのだが、誰1人として全く似ていない。
顔も似ていなければ、性格なんてもっての他だ。
「キカは良いんだよ。あいつはズルはしない」
扉を差していた指を、ユックリ押し戻しながら言った。
「えっ!?それはオレならズルするって言ってるの!?酷くない!?傷付いたーー!!」
「胸に手を当てて言ってみ?」
「キーズーツーイーター」
「怪しさ全開だぞ…」
イワは、明るく無邪気なのだが、ちょいちょいやらかしてくれるのだ。
ただ、その人懐っこさと愛嬌から、だいたいの事が許されるという、愛されキャラだから狡い。
「でもさ、今回はオレも手伝おうか?」
「どういう風の吹き回しだ?!」
滅多な事がない限り、自分からそんな事を言うタイプではないのに、今回に限りそんな事を言ってきたイワに、そのままの疑問を投げた。
「酷いなぁ。オレだって、たまにはミザに協力したいって思う事もあるよ」
かなり怪しい…
眼前にある笑顔を見ながら考える。
でも、流石に連続で出続けてるから負担は減らしたいんだよな……
俺は小さく溜め息をついた後、淡々と言った。
「後から、何も請求してくるなよ?」
「もちろん!」
″状況を確認してくる″
と言って、イワが出ていった後、俺は今回の依頼内容を再確認していた。
依頼主や、その他諸々の事を頭にいれ終えた頃、部屋の扉が開いた。
「あれ…、イワちゃんは?」
いつの間にか部屋を出ていたキカが、戻ってくるなり部屋の中をキョロキョロと見回し、先程までとの異変に対して聞いてきた。
「何か、今回は手伝ってくれるんだと」
「珍しいね」
「俺も思ってた」
聞いてきたわりには、さほど興味も無さげに、テーブルを挟んだ向かい側のソファーに寝転ぶと、瞼を閉じた。
末っ子のキカは、超が付くほどのマイペースだ。
けど、性格は真っ直ぐでしっかり者な上に、勘が鋭いので、こいつもまた狡い。
「俺も今回は手伝うよ」
「え?」
イワに続き、まさかの言葉に俺は驚きの声を上げた。
「どうしたんだよ?お兄ちゃん若干怖いよ?」
「何で?だって今回3回目の依頼でしょ?やっぱり3って数字には俺達反応しちゃうよ」
「…ああ。もう3回目か…」
ずっと自分ばかりが対応してたから、回数とか気にしてなかった。
てか、三兄弟だから3に反応するって…どうしたものか……弟達が可愛い…
「それに、今回の依頼ちょっと気になるしね」
「何が?」
心の中で弟達を絶賛していると、数字以外にも気になる事があるらしいキカが、聞いてきた
「この依頼渡してきた時、父さん何か言ってた?」
「あ?あー…、そういえば、珍しい事言ってたな。『出来るだけ速やかに、対処するように』って」
「やっぱりね」
「何が?」
「んー、解決したら教えてあげるよ。まだ、確定してるわけじゃないし、何よりまずは、イワちゃんと合流だね」
「あ、ああ」
何だ?凄い気になるんだけど…
詳しく聞こうにも、話に一区切り付けてしまったキカには、何を言っても聞いてはくれない事を把握しているので、俺もそれ以上何も言わなかった
「じゃあサッサと片付けに行くとしますか」
「うん」