クラウン×クラウン

□第一章
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「何故だ!何故何も掴めない!!」

アルゼル国執務室から机を激しく叩きつける音と焦りを交えた怒鳴り声が聞こえる。

「世界一の大国の第二王位継承者の事が何故こんな何一つ掴めないんだ!!」
「落ち着いて下さい。レイス様。あの方ならきっとご無事です。」
「……くそっ!
ロアナ……。この世界はどうなってしまったんだ…。」



第一章 アルゼル


森の中を流れる浅めの川にお手製らしい釣竿がセットしてあり、その竿の先端に綺麗な色をした鳥が止まっている。

鳥の囀りと木々が風で揺れる音、静かに流れる川のせせらぎだけが聞こえる森の中で、釣竿の先端が大きく動いた事によりその周りだけが慌ただしくなった。

「引いた!!起きろロア!!引いてるぞ!!」

竿の先端にいた綺麗な鳥が慌ててそう言いながら飛び立ち、竿の側にある大きな岩に背を預け眠っている男とも女とも伺える端正な顔立ちをした十代中頃から後半くらいのロアと呼んだ相手の頭をくちばしで突いて起こした。

「ふわぁ〜〜。やっとか。」

ロアは大きな伸びともに起き静かに竿に手をかけた。

「うらあぁぁぁあぁぁ!!」

凄まじい気迫と気合いで釣り上げた魚を焚火で焼き、ロアと綺麗な鳥で食べながらロアが話し出す。

「あのさぁ、僕考えてたんだけど…」
「何?」
「仕事しないとお金無くなるよ。」
「…。まぁ……もっともだ。」
「そこでさぁ…、リトなんか一発芸でもして稼いでよ。」
「はぁ!?」

予想していなかった言葉にリトと呼ばれた綺麗な鳥は不満の声を出した。
それを気にもとめずロアは話し続ける。

「何か出来ないの?僕がリンゴ投げてリトがくちばしで刺すとか。」
「何でリンゴなんだよ?!痛いだろ。」
「ん?リンゴじゃ不満?じゃあスイカ?メロン?」
「全部却下!」
「えー?!他に固いモノ思い浮かばないよ?」
「だーかーら!何で固いモノ限定なんだよ!」
「アレ?言われればそうだね…。きっとさぁ………、日頃の恨みからじゃない?」
「何のだよっ!?」

ずっとロアの言葉に突っ込むばかりだったリトが、反撃するように大きな溜め息をつき呟いた。

「ハァ…。王族が金の心配しないといけないなんて。」

その言葉に少しだけ眉根を寄せたロアが、
「王族じゃないし。」
と、リトへ冷たい視線を向けた後少しの沈黙が流れた。


黙り込むロアに痺れを切らしたリトが、声を掛ける為動こうとした瞬間、二人の後ろ側の茂みが微かに動いた。
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