短編小説

□クラウン・クラウン
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世界の全てには裏と表が存在する。
かつて世界を滅ぼすほどの大きな戦いがあった。
最強と言われる二つの魔術を使う二人の魔術師が現れ、相容れないその力がぶつかり合いその大戦で魔術師は滅び世界も壊滅状態にまで陥った。
二度と同じ事が起こらないように神と言われる存在はその二つの魔術を使える魔術師が同じ時代に現れる事のないようにした。

だが、時代はまた巡るー。


【クラウン・クラウン】


「どうだ?ロア。何か見えるか?」
「ダメだ。よく見えない。」

問われた質問に一眼の携帯型望遠鏡を覗いたままに答えるロアと呼ばれた人物は、精悍な顔立ちをした女とも男とも思える中性的な雰囲気をしていた。

「…てかさぁ」
おもむろに望遠鏡から顔を背け隣りにいる犬に向かって話掛ける。

「僕が望遠鏡で見るより、リトが直接見た方がはやいんじゃない?」
不満顔で犬に向かってそう言うとすぐさまリトから返事が返ってくる。

「無理だ。だいたいロアは諦めがはやいんだよ。もっと自分で粘れ。」

リトの言葉が終わる頃にはイライラした表情になったロアが持っていた望遠鏡を犬に向かって思いっ切り降りおろし当る寸前で止めた。
すると犬の後ろから素早くスズメくらいの大きさの見た事がないくらい綺麗な鳥が現われた。

「あっぶないだろ!!何するんだっ!!」
「……あー…、」

当る所だっただろ!とリトと呼ばれた鳥はロアに怒鳴った。
それを見ながらロアは冷ややかな目線だけをリトに向け
「犬に隠れてとやかく言ってくる鳥にちょっとイラッときた。大丈夫。当てるつもりはなかったし。」
と、自分の行動の理由を説明した。
すると、ロアの突然の行動にビックリして固まっていた犬の前に出てリトが更に怒鳴った。

「嘘つけ!!あれは本気のスピードだった!どうすんだ!?関係ない純粋な犬の心に傷付けて!」
「じゃあはじめから関係ない犬に隠れないでよ。」

やれやれ。とかなりの温度差でリトの怒鳴りを流すとロアは自分の膝を抱えそこに頭を沈め静かに言った。

「僕たちにはやらなければいけない事があるんだから…。」
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