クラウン×クラウン
□第二章
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「ポートレイア王はロアナを切り捨てたか…いや、世界は……か?」
紙の束を捲りながら一人淡々とマウンゼン国王は言った。
すると、激しく執務室の扉を叩く音がし、同時に切羽詰まったような声が聞こえる。
「父上!ヒスです!お聞きしたい事があります!」
子息であるヒスの声に呆れたような溜め息を吐き低く響く声で答えた。
「騒ぐな。入れ。」
その言葉を聞き、ヒスは勢いよく扉を開けると、バタバタと騒がしくマウンゼン国王へ近付いた。
「父上!ロアナがポートレイアを追放されたというのは本当ですか!?」
血相を変えて聞いてくるヒスを見下ろしながら国王は言った。
「あぁ。ポートレイア王の命でな。」
「な、何で!?」
「ヒス…。もっと王族らしい態度を身に付けろと何度言えばわかる?」
抑揚はないが凍えそうなほどの冷ややかな声にヒスは怯む。
「だけど俺には…っ!」
言葉を言い掛け、国王からの威圧的な眼差しに喉を詰まらせた。
そして言わんとする事を把握し言い直す。
「私にはどうしてそうなったのか理解出来ないのですが?」
「誰にも理解出来ないだろう。当事者以外はな。それよりも、近付くべき相手がハッキリした。」
「え?」
「今後イザナに敬意を見せるようにしろ。」
「イザナにですか!?」
ロアナの兄であるイザナは、冷静沈着で気に入らない者や役に立たない者に対しては、恐ろしい程の気配を漂わせている人物だった。
イザナから一切興味を示してもらえた事がないヒスは、彼を苦手としていた。
「ポートレイアの次期国王には媚びを売っておいて損はない。それから、ロアナに関する情報が手に入った時は全て私に報告するように。見掛けるような事があれば捕まえておけ。」
「何故ですか!?」
「使えるものは使わなければな」
「…………」
「話は以上か?では下がれ。私は忙しい。」
「…はい。」
そう言うとヒスはゆっくりと部屋を後にし自室へ戻った。
そして暫く考え込んだ後
「レイスに会うか…」
そう呟いたのだった。
第二章 マウンゼン