*遙時
□■誓い事
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その姿があまりに儚く、
抱き締めてやらねばと不意に思った。
このような表情をさせたくはないと。
女人の涙はどこか煩わしく
好ましいものでは無かったが、
君の涙は私の胸を痛めるのだよ。
ゆっくり、息をしやすいように
背を撫で、指に髪を絡め、頬に口付け。
「大丈夫、大丈夫だ、天真」
何が大丈夫なのかと問われれば
返答には困ってしまうのだが、
少なくとも今彼に必要なのは
私なのだと自惚れて声をかける。
「アンタに、飽きられんのが怖い、」
葉の落ちる如く小さな声音で、
彼がこぼした言葉に
驚き目を見開いた。
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