*遙時

□■誓い事
2ページ/6ページ



その姿があまりに儚く、
抱き締めてやらねばと不意に思った。
このような表情をさせたくはないと。

女人の涙はどこか煩わしく
好ましいものでは無かったが、
君の涙は私の胸を痛めるのだよ。

ゆっくり、息をしやすいように
背を撫で、指に髪を絡め、頬に口付け。


「大丈夫、大丈夫だ、天真」

何が大丈夫なのかと問われれば
返答には困ってしまうのだが、
少なくとも今彼に必要なのは
私なのだと自惚れて声をかける。






「アンタに、飽きられんのが怖い、」






葉の落ちる如く小さな声音で、
彼がこぼした言葉に
驚き目を見開いた。





.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ