*遙時
□■頼久さんの苦悩
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これはもう誰かの悪意としか
私には思えない
―――――頼久さんの苦悩
「それはどういう事かね」
いつもと変わらぬ平和な空気を
まるで無視して打ち破った、
これがお手本とでも言うような友雅の
心境を全面に押し出した「不機嫌」な声。
「あの、いやこれは……」
「説明しなさい頼久」
ブリザードですか、と言いたくもなる
不機嫌攻撃を受けている頼久本人は、
友雅の扇の先が向けられた「それ」と
友雅を交互に見、顔面蒼白になっている。
「まさかお前がこのような事を…、」
「め、めっそうもございませ、
ちょ、友雅殿、落ち着いてくださいっ」
あわあわと珍しく両手をジタバタさせ、
何とか友雅の機嫌を治そうと
頼久は必死で弁明を図るのだが。
我らが左近衛府少将殿は
一見大人に見えて突き詰めれば
嫉妬深くひねくれた子供のような人柄。
頼久程度の静止では効く筈もなく。
一度拗ねると誰にも止められない。
ただひとり友雅が猫可愛がりする恋人
森村天真を除いては、と
言いたい所なのだが、当の本人は夢の中。
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