*遙時
□■勿忘草
1ページ/5ページ
「(互いの心は繋がっている、と)」
―――――勿忘草
「‥つ、…ここ、は…」
白龍の神子と時空を越えた際に、
どういった訳かひとりだけ
違う時代へと流されてしまったらしい。
彼は平泉において重要な人物、
源氏と平家との戦の真っ只中に居た
泰衡という青年だ。
「神子殿は居らず、か」
辺りを見回せば、大きな池が
広がるばかりの見慣れない風景。
人影は見えず、見えたところで
不審者として捕らえかねない。
身元の証明など出来ないのだから。
「龍神も面倒なことをしてくれる…」
泰衡は眉間に皺を寄せ、
ぶつぶつと龍神への文句を呟いた。
そこに。
「天女かと思ったが、
まさか男だったとはね…
ふふ、驚いたよ」
.