*遙時
□■草笛
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たまにはこんな時間も、
悪くは無いのかも知れない。
―――――草笛
静まりかえった野原で、
ピー…、と小さな音が響く。
鳥の鳴き声のようだが
それは『草笛』と言う物であり。
「風流だね、勝真」
美しくか弱い音に誘われるよう、
私は野に居る青年に思わず声をかけた。
そうすれば君は振り向いて、
私の登場に少し意外そうな顔をする。
「…ああ、翡翠か」
「草笛の音がして、ついね」
ふふ…、と笑めば
これか?と勝真は草笛を
私にひとつ手渡して。
「よく吹いたよ、懐かしい」
「俺も小さい頃、よく遊んだんだ」
いつもとは違う、無邪気な笑顔。
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