―NOVEL―

□―願―
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―願―

 
 
 
毎日が過ぎるのはなんて早いんだろうと常に思う。
この侭、刻が止まれば良いのに――…
なんて思っても、命と云う砂時計は音を立てて落ちて行く。
 
両親が居なくなり、ぽっかりと空いた胸を塞ぐ為にがむしゃらに修行に励んだ。
 
総ては自分の為に。
 
だけど三代目風影はオレの技を認めてくれた。
 
 
 
直々に傀儡部隊の隊長に命じられ、その時はほんの少しだけ喜びを感じた。
ほんの少しだけ。
 
だから頑張った。
 
 
 
「サソリ…流石はお前の部隊だな。百人力だな…私でもお前には勝てないだろうな…」
 

「くだらねェ…砂鉄なんちゃらが有ればオレの動きだって止めれるだろうよ」
 

「そうだとしても私はお前を手にはかけたくないな」
 
 
 
三代目はそっと両の目蓋を伏せて切なげに声を響かせた。
それは何れオレをその手に掛ける日が来るかもしれない、という念を示してるのか。
 
三代目から小さな溜息が洩れた。
 
オレは薄ら笑いを唇に浮かべて、椅子に座る三代目と同じ目線の高さで真っ直ぐと見詰めた。
脳裏には常に人に囲まれている三代目の姿。
 
其処にはオレの姿はちょこんと在る。
オレも“天才造形師”として一目を置かれているが、三代目は遥かに上だ。
 
まるで雲の上の人のようだ。
 
 
 
「……皆に慕われて、強くて優しくて、風影という地位のアンタらしい台詞だな。“もしも”の時は…全力で来いよ」
 

「私がお前を止められるのならな」
 

「止め――…ッ?」
 
 
 
科白に息を呑む。
ヒヤリと心臓が萎縮した。
しかし大きな腕が延びて来たかと思えば頭部に緩やかな圧が加わる。
クシャリと髪を撫でられ、感じる心地良さに思わず目蓋を伏せてしまう。
だけど直ぐに眸を開けてジロリと視線を注いだ。
 
だけど手だけは払わなかった…
何故か払いたく無かった…
 
 
 
「子供扱いするなよ…」

 
「サソリはまだまだ子供だ。そう照れるな」
 

「て、照れてない!それに子供じゃない!」
 
 
 
 

 

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