短編

□だって出遭ってしまったんだ
1ページ/1ページ

引裂く音は響いた。
夕日の沈みきった空には不穏な楕円が浮かんでいる。歪んだその光を焼き付けたまま、俺はまだ動けずにいた。
「隆也、隆也・・・」
会いたかった。繰り返し繰り返し告げられる言葉。
押し付けられたロッカーから冷気を感じる肌は、それでも熱を上げ続けてとまりそうにない。
「俺、お前じゃねぇとだめだ」
あんたは、そんなことを口に出来る人間だったのか。
ならばそれは数年前に聞きたかった。どうして今でなけりゃならないんだ。
あんたはいつもそうだ。何年たったって変わらねぇ。いつだっていきなりだ。俺がどんだけ忘れようと努力したって、いきなり現れて、何もかもを奪い尽くすんだ。
「やめろよ・・・は、るな」
ボタンをはずしにかかった左手を、力を込めずに押し返す。
「うるせぇ」
唸る低音は怖くなかった。跡がつくほどに掴まれた右肩も。
ただ、
「はなせ」
三橋が触った、俺の身体に触れるなよ。
告げる俺の言葉のあとに目元を歪めたあんたが力を強めた手のひらの下で、俺の骨が軋む。
















三橋と榛名は永遠に敵同士。
非常線救助して。 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ