短編
□レモネード
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「ただいまー」
「おかえり」
勇人がふわっと顔を覗かせる。
キッチンの暖簾を右手で押さえて、エプロン姿だ。
「さきお風呂入っちゃう?」
そーだなぁ。
時間的にご飯作りはじめたばかりだろーしなぁ。。
「じゃあお風呂♪」
「沸いてるよ〜」
「勇人も一緒に、はい」
「俺、飯つくってるだろ」
「は〜い。。」
「。。入浴剤入ってるよ」
「バラのやつ?」
「生クリームのやつ」
「ほんとに?!やった〜」
「くれぐれも、飲んだりするなよ」
「いやだなぁ。いくらお腹すいてても口にいれたりするわけないじゃん」
「わかんないよ。お前は」
「ないよ、お風呂のお湯なんて。。。勇人が入った後なら分からないどね」
「はいはい、早く入っちゃいな」
呆れたように背を向けてキッチンへ消えていく後ろ姿。
だけど、君の耳が朱に染まっていることを知っている。
可愛い。
可愛いよ。
君と一緒にいられてとてつもなく幸せだ。
君は常識人だから、口説き落とすのにずいぶん時間がかかったな。
だけど、不思議と本気で諦めようと思ったことはなかった。