〜もう一つの世界〜
□咆哮、そして
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『……パターン青、消滅!!』
シゲルが報告すると職員達はどっと力が抜けたのか、緊張を解く。
だが、メインオペレーター三人組とシンジとリツコだけは、いまだに肩が力んでいるのが見える。
「……日向!パイロットは!?サードチルドレンは、無事か!?」
とシンジがマコトに聞くと、彼は笑顔で振り向いて、頷いている。
「確認できます!!無事です!」
どうやら、ミサトは無事のようだ。それがわかってから、やっとシンジ達も肩の力を抜いていく。
「ふぅ……。救護班、回収係共に待機!パイロットを保護よ!!」
リツコがマイクで、もう待機しているであろう救護班に命令する。
「……赤木さん、僕は病室に行っておくよ。気絶しているミサトが来るだろうから。知り合いが病室にいたほうが……ぶわぁっ!?」
そう言ったシンジの顔には、かなり大量の紙の束が押し付けられた。どうやらリツコの仕業らしい。
「いてて……なにすんのさ!?」
「ダメよ!腐っても貴方は作戦課長なんだから。苦情が来てるわよ。その束があと二個あったわ!それにこの病院がどんな服装で来られるか覚えてるはずよ。早々にミサトに嫌われるつもりかしら?」
シンジは言われてやっと気がついた。自分が第伍使徒にやられてしまった時に、色々と恥ずかしい醜態を綾波に見られたことがある。
あれが綾波に見られたからまだよかったのだ。彼女はあまり嫌悪感を表に出す子ではなかったから。
出す方法すら知らない子だった。
「……あはは、赤木さん。思い出させてくれてありがとう。出会って早々ミサトが顔を見てくれない事態になりそうだったよ……!」
と、彼は乾いた笑い声を上げた。
「だから、ミサトのことはマヤが見てくれるみたいだからね!!」
と、シンジは彼女がいまあげた人間の名前に、若干驚いている。
「へぇ……伊吹が!?珍しいね。あの赤木さん大好きな子が……」
「マヤもマヤなりに心配してるのよ?碇指令がミサトを自発的に乗せるためにした方法が、彼女には許せなかったみたいだから……」
リツコは話して、深く吐息していた。シンジも顔をしかめている。
確かに、アレは酷いことだろう。
生死の境をさ迷っている状態の女の子をわざわざあそこへ連れてきて、それをミサトに見せつける。
お前が乗らなければ、この子が乗るのだ。それでもいいのか?と。
そうすれば、ミサトはその子を助けるために初号機に乗るだろう。
シンジもミサトにそうやって促した一人なので、何も言えないが。
かつてのミサトも、彼と同じような葛藤をしていたのだろうか。
「そうだな。伊吹には辛かったかもしれない……。僕も父さんの考えがわかってしまった時は、父さんがさらに嫌いになったよ……」
とシンジも苦笑をこぼしていた。
やはり、この世界でも親子関係を改善することはできないらしい。
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