〜もう一つの世界〜

□紫のヒト、来たる
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シンジのかけ声を聞き、次々と初号機の拘束具が除去されていく。




『第一ロックボルト解除!!……解除、無事確認しました。……アンビリカルブリッジへ移動!!』




『第一、第二拘束具除去!!』



すると、拘束具が外れた。解除作業は着々と進められていく。



『1番から15番までの安全装置解除!!内部電源充電完了!外部電源コンセント、異常なし!……エヴァ初号機、射出口へ!!』




すると、初号機は発進するための場所へと、自動で移動されていく。それをミサトも、やや緊張したような面持ちで見ていた。


自分の体が引っ張られているような錯覚が彼女を襲っていた。





『5番ゲート、スタンバイ!……進路クリア、オールグリーン!……発進準備、完了しました!!』




オペレーターの言葉を聞き、シンジは額の汗を腕で拭った。




「……了解しました!!……碇司令!!かまいませんか……?」




シンジは、不要だとは知っているのだが、一応は最高司令官のゲンドウにも許可を取っておく。



「ふん……もちろんだ。使徒を倒さぬ限り、我々に未来はない」



少しも顔色を変えずに、ゲンドウはシンジに発進許可を示した。



「……了解しました。エヴァンゲリオン初号機……発進ッ!!」




シンジの命令で、カタパルトにある最終拘束具が外れた。そしてそのままの反動で初号機が上へ上へとどんどん上昇していく。





「う、くうぅッ……!!」





ミサトは凄まじいGに体を襲われていた。ジェットコースターには何度か乗ったことがあるが、あの時の衝撃よりも何倍も凄まじい。




そして、初号機は地下から地上へと押し出されたのである。





―――――――――――――――








初号機の目の前には使徒、サキエルが立ちはだかっていた。





「ま……待ち伏せッ……!?」




『……いいね、ミサト!?』



そう呟いたミサトにシンジが叫ぶ。ミサトは慌てて返事を返した。




『……最終安全装置、解除してください!!……エヴァンゲリオン初号機、リフト・オフッ!!』



肩の最終安全装置が解除され、初号機は少しだけ前屈みになる。




『……待ち伏せされてたか。ミサト!!とりあえず歩くんだ!』



「……あ、歩くって……?」



『意識を集中して歩くことのみを考えろ!考えるだけでいい!』



シンジはサキエルの動きを見ながら、ミサトに命令する。




……歩く。歩く……!歩く!!



ミサトはシンジに言われた通りに歩くことにのみ意識を集中する。




自分の姿が、一歩踏み出した。





初号機の左足が大きく動き、たった一歩だけだが大きく歩いた。




「うわぁっ!!わ……ッ!?」




いきなり初号機の足が大きく動いたので、ミサトは頭の後ろの部分を椅子に激突させてしまった。


軽くむち打ちになりかけた。





「いぃ……ッ!!」




痛みに悶えるが、そんな彼女を見るよりも大人達は初号機を見る。


色々な意味で心がささくれる。





『や、やった、歩いたぞ!!』




本部の職員達の歓声が広がった。

ずっと整備をしていた職員からすれば嬉しい他この上ない事態だ。









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