〜もう一つの世界〜
□NERV本部へ
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「……あぁ、赤木さん……!!」
開いたエレベーターの扉の先にいたのは、赤木リツコであった。
リツコは前のようにシンプルな水着の上から白衣を羽織っている。
「全くもう……!!」
多分、昔のように来るのが遅かった自分達を迎えに来たのだろう。
というか、昔よりも遅いだろう。
「……遅かったわね。私が司令から貴方達を迎えに行けと言われたんだけど。迷子になったのね?」
心底呆れたように話すリツコは、シンジの返答を一切待たずに、視線をミサトの方に寄越していた。
「例のサードチルドレンね?赤木リツコよ。リツコでいいわ。ここの技術面の最高責任者だと考えてくれればいいわ。そして貴方の隣の人は戦闘面、作戦面の最高責任者なのよ?……見えないけどね」
とリツコは説明して、彼女に握手を求める。シンジの顔は、なぜだか赤くなっていた。恥ずかしい。
「私も、ミサトでいいです……」
ミサトは彼女が言ってきた、サードチルドレンという単語に首をかしげていたが、あまり深く考えずに彼女はその握手に応える。
「あ、それと。ちょっとした手土産よ。しっかり読んでおいてね」
すると、リツコはずっと腕に持っていたファイルをミサトに手渡してきた。そして、その題名は。
『ようこそ、NERV江!』
と書かれていて。初めて見るそれに、ミサトは興味と好奇心が勝ったのか、ファイルを開いていく。
「……あぁッ!?それはッ!!」
それを見ながら、シンジはしまった!!と、冷や汗を流していた。
多分あれは、自分の部屋に置き忘れた、本部案内用の書類である。
それはつまりだ。あのゴミ部屋をリツコに探させたのだ。最悪だ。
男としてどうだとかは、この際は関係ない。片付けと料理が自分の唯一の特技だったのに、一体なにをやっているんだ。恥ずかしい。
「あの、ごめん。赤木さん……」
「あら別に気にしていないわ。ゴミのような執務室からそれを探しだした労いなんていらないわ。強いて言うなら、今日じゃなくてもいいから散らばる紙を片付けなさい!くらいかしらねぇ?」
ブリザードが吹き荒れる程の冷たい笑みに、シンジは凍りついた。
「……か、片付けます……!!」
今日じゃなくてもいいが、片付けをしなければ!!と堅く誓った。
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