短編小説
□セーラー戦士達の災難
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セーラー戦士達は、このような状況に戸惑いを隠せなかった。このようなケースは初めてだった。
「……な、何なのよ。こいつらは!変態!?」
と、敵に対して毒づくマーズ。
なんとも酷い言われようだ。
「マーズ、気持ちはわかるけど落ち着きなよ!?」
と、そんなマーズを慌てながら宥めるのはジュピターの役目だ。
「あの白衣の男は、何かフラスコのような容器を持っているわ!あの中身は危険だわ……」
と、やけに落ち着いて敵の解説をするのはマーキュリーである。
「……持ち物がフラスコってことは、あの変なおじさんは理科が得意なのかな!?」
と、戦意を喪失させるような発言をするのは、ムーンである。
だが、今は生憎このムーンと一緒にこれまた奇想天外な発言をする女の子が、ここにはいない。
このセーラー戦士達の一人の愛野美奈子、そう、ヴィーナスはこの場にはいないのである。
「美奈子ちゃん……こんな日に限って遅刻だなんて……ッ!!」
とマーキュリーはリーダー不在の理由に頭痛がした。その理由は、いつも美奈子がする行為、遅刻、である。内部戦士のリーダーである彼女が、こんなことで許されるのだろうか。
しかもだ。
今日は、美奈子が仲間達と共に遊ぶことを決めたからでもある。そして今回の敵は何の情報を突き止めたのか。
ここにさらに妙な敵が紛れ込んできたので、皆の美奈子に対しての不満が急速に高まってしまったのは仕方がないことなのだが。
「しかもこのタキシードの人はともかく……白衣の人は人間なのよ!」
とマーキュリーが驚愕しながら皆に叫んだ。どうやらマーキュリーの考えではタキシードを着込んだ敵は人間ではないということか。
しかし、であるだ。二人とも人間からかけ離れるほどの気持ち悪いオーラを醸し出しているのだが。
「……なっ、ちょっと待ってよ。何で人間が!?」
とマーズが驚愕の声を上げる。
「……けれど、私達の敵という事には変わりはないわよね!?」
と、珍しくムーンが物わかりがよい発言をしている。しかし今は、一大事なのでマーズは彼女を茶化す様な言葉は今は慎んだ。
ここで喧嘩をしては、あっという間にこの二人にやられてしまう。
すると白衣の老人はタキシードを着込んだ男に話しかけだした。
「ハリガン!フラスコの中身ならもう完璧に完了だ!ちゃっちゃとやっちまおうぜ。アヒャヒャ!」
と、下品な笑いをしながら白衣の老人はタキシードの男性をハリガンと呼びながら興奮している。目は血走り笑い声が堪えない様だ。
フラスコの中身はぷつぷつとたくさんの気泡が発生していて、なんだか真っ黒い色をしている。マーキュリーが言ったとおり危険さはマックスである。
「ふん、よかろう……サドム!」
ハリガンは白衣の老人をサドムと呼び、汚らしい笑みを作った。
「……この正義のヒロイン達を!!不幸と混乱の渦に、突き落としてやろうではないかねッ!!」
そして、ハリガンがポケットから取り出した物、それは……。それは、戦争ドラマ等でよく見受けられる手榴弾に酷似していた。
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