シリーズ物

□家族の呪縛
2ページ/5ページ







そう。それは、とある声を聞いたからであった。その声は、叫び声のような恐ろしい怒号であった。







「……ちょ、ちょっと!冗談じゃないわよ!!……そ、そうやってまたしらばっくれるわけッ!?」





その怒号に近い声は母、育子の声であった。育子は父に何かの紙を押し付けている形になっていた。

父親もやけに怖い顔付きだった。





「そうだとも!!僕は、やっていないんだからな!!そんなふざけたものを認めてたまるかッ!!」




次に、父の鋭い怒号である。

父は怒りながら、母に叩きつけられた紙に、判子を押していた。




「うわあーん!!うさぎぃ!!」




二人が怖かったのか、弟は、泣きながらうさぎに抱きついていた。




「……進吾?」




とうさぎは弟の頭を撫でる。

うさぎが扉を開く音が聞こえたのか二人はそちらを見た。その視線にうさぎはビクと肩を震わせる。




「うさぎ……ちょっと来なさい」




この異様な空気の中、うさぎは怯えながら、育子に言われた通りにそろりとリビングに入っていく。





「うさぎ。……貴方は、父さんと一緒にアメリカへ行きなさい?」





「……は?……今、なんて!?」




うさぎは、自分の耳を疑った。

今、自分の母親はなんと言った?

その母の言葉に、父は激昂した。





「何!?……何でだよ!?僕は、連れてはいかないぞ!?……君が連れていけばいいだろうに!!」




そう母に叫ぶように言う父の言葉に、うさぎは少し傷ついていた。





「私には進吾がいるんだから!!貴方が連れていきなさいよ!!」




「……これだから、僕は子供なんて欲しくなかったんだよッ!!」





父はそう叫んでからハッとなる。



そして弟とうさぎの顔を、罰が悪い顔で申し訳なさげに見ていた。






なら……私は……私達は何なの?








.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ