シリーズ物
□家族の呪縛
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そう。それは、とある声を聞いたからであった。その声は、叫び声のような恐ろしい怒号であった。
「……ちょ、ちょっと!冗談じゃないわよ!!……そ、そうやってまたしらばっくれるわけッ!?」
その怒号に近い声は母、育子の声であった。育子は父に何かの紙を押し付けている形になっていた。
父親もやけに怖い顔付きだった。
「そうだとも!!僕は、やっていないんだからな!!そんなふざけたものを認めてたまるかッ!!」
次に、父の鋭い怒号である。
父は怒りながら、母に叩きつけられた紙に、判子を押していた。
「うわあーん!!うさぎぃ!!」
二人が怖かったのか、弟は、泣きながらうさぎに抱きついていた。
「……進吾?」
とうさぎは弟の頭を撫でる。
うさぎが扉を開く音が聞こえたのか二人はそちらを見た。その視線にうさぎはビクと肩を震わせる。
「うさぎ……ちょっと来なさい」
この異様な空気の中、うさぎは怯えながら、育子に言われた通りにそろりとリビングに入っていく。
「うさぎ。……貴方は、父さんと一緒にアメリカへ行きなさい?」
「……は?……今、なんて!?」
うさぎは、自分の耳を疑った。
今、自分の母親はなんと言った?
その母の言葉に、父は激昂した。
「何!?……何でだよ!?僕は、連れてはいかないぞ!?……君が連れていけばいいだろうに!!」
そう母に叫ぶように言う父の言葉に、うさぎは少し傷ついていた。
「私には進吾がいるんだから!!貴方が連れていきなさいよ!!」
「……これだから、僕は子供なんて欲しくなかったんだよッ!!」
父はそう叫んでからハッとなる。
そして弟とうさぎの顔を、罰が悪い顔で申し訳なさげに見ていた。
なら……私は……私達は何なの?
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