灰男

□お酒フォーエヴァー?〜お酒な貴方〜
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どうしてこうなったんだろうか?



と、白髪の少年は火照った体でそう心の中で呟いていた。

ここは確か大聖堂のはずである。いや、談話室だっただろうか?

それさえも記憶にない。

ただ、だだっ広い部屋にはワインやらウイスキーやらビールやらの空き瓶が大量に散らばっていて。


黒髪のポニーテールの少年は、なぜか割れているワインの瓶をつかんで床に突っ伏し……。


赤髪の隻眼の少年は、奇妙で怖い笑い声をあげながら、体にビールを浴び続けていて。


黒髪のツインテールの美少女はルベリエと空き瓶の投げ合い……。


気弱な長身の紳士は空き瓶を抱きしめ愛する人の名前をぶつぶつ言いながら、涙を流し……。


そしてアレンは上半身裸で床に仰向けで無様にぶっ倒れていた。

この異様な空間で未だに酒を煽っている人物が、たった三人。


問題人物のクロス元帥に、危険人物の室長。そして……。


教団の心の癒しの彼女であった。







お酒フォーエヴァー?〜お酒な貴方〜







それは、ほんの数時間前だった……。昼の2時を少し過ぎた頃。

いつものメンバーは、いつものようにお茶会を開いていた。




「あぁん?お前ら茶ぁなんて飲んでやがんのか?そいつぁいいじゃねぇか。俺も交ぜてくれや?」




と教団きっての自然、いや人工災害の人物がそのお茶会に現れた。




「げ、げぇっ!!師匠……!?」



とアレンはその人物を見て青ざめていた。そう、その人物とはあの有名なクロス元帥である。




「バカ弟子には用は……いや、あるか。お前らちょいと茶を飲むのは止めろよ。俺が持ってきたコイツを一緒に飲もうや。なぁ?」




とクロスが弟子を罵りながら、加減せずに思いきり蹴り飛ばした。



「ぎゃあああぁんっ!!」



べしゃっと顔面から落ちた弟子をちらと見て、自分が持ってきた大量の飲み物を突き出してきた。




「そっ、それって……酒じゃねぇさ!?おっ俺ら未成年さよ!?」



とラビが顔を引きつらせながら椅子から降りて、勢いよく手を振って必死に拒否をした。

しかしそれを聞いたクロスは、ニヤリと不適な笑みを作った。




「おいおい!それでもブックマンの端くれか?20歳未満で酒がいいとこもあんだぜ?……そうだな、バカ弟子がギリギリでいける。だからここもいけんだよぉ!!」




異国の野郎や、女がいるしな?



等と、かなり滅茶苦茶な意見を口にするクロスにあの神田ですらも青ざめて、後ずさっていた。





「俺の年は日本国ではまだ未成年なんだ!だから俺はパスだ!!」





「わっ私も未成年だし……お酒はちょっと遠慮しようかしら……」




とリナリーもクロスに曖昧な笑顔でそう拒否をした。すると彼はまたニヤリと笑みを作った。




「ほぉ、じゃぁ……そこのヒョロなげぇのとミランダが適任か。……お前ら、酒はいける口か?」




「いけるにはいけるであるよ?」



「私もいけるにはいけますよ?」



とやけにでかい人物のクロウリーとやけに細いミランダは、若干おどおどとしながらそう答えた。




「ふん、上出来じゃねぇか!じゃぁ場所でも移動するか。ここじゃぁ外野がうるせぇからなぁ!!」




とクロスが提案をして大人組を連れていこうとしたが、子供組がそれにいち早く反応した。




場所を移動するということは、すなわち三人きりになるということだ。クロウリーはとてもいい男だが、クロスはよくない男。


可哀想にクロウリーにはあの赤い髪の変質者を止められるまい。




子供達としては、何がなんでも移動させるわけにはいかなかった。


子供組の腕が次々に上空に舞う。




「あぁ!僕もなんだか飲みたくなっちゃったな。師匠のお酒!!」




とアレンが半ばやけになって叫ぶようにクロスに訴えた。そして挑戦的な眼差しを師匠に向ける。




「おっ、俺っちも酒を飲みたくなっちまったさぁ!!なっなぁユウ!?……げふあぁぁっ!?」



とラビが神田に賛同を求めながら叫んだ。すると神田は、ラビを思いきり殴り付ける。




「ファーストネームを呼ぶんじゃねぇよ兎!刻むぞコラ!まぁ飲んでやらなくもないが……!?」



と神田もやけに途切れ途切れにだが、そうクロスに伝える。




「……わっ私も、兄さんに内緒で飲みたくなっちゃったな!!」




とリナリーも兄のコムイが聞いたら卒倒するような発言をした。


変に一致団結する四人に目を細めてから、クロスは笑った。



「お前らいい度胸してんじゃねぇか!!女以外は全員立てないようにしてやるよ!覚悟はいいか?」



とクロスは持ってきた酒瓶を四人に一本ずつ投げつけた……。


クロウリーとミランダにも配る。



「ショータイムの幕開け……」




「その勝負、待たれぇえっ!!」




とクロスがお茶会ならぬお酒会を始めようとしたところ、誰かがその開始の言葉を遮っていた。


開始の言葉を見事に遮られた形のクロスは、不満げな眼差しを声がした方に向けていた。




「僕を参加させてくれないなんて水くさいんじゃないかな。クロス。僕もれっきとした大人組だよぉ?コイツは老人組だけどね!!」




「私も参加させてもらおう。なに、ちょっとした余興ですな?そしてコムイ室長にはきついアルコールの酒を飲ませてあげますよ!」




それはリナリーの兄であり、黒の教団室長でもあるコムイ・リーと、中央庁長官のマルコム・C・ルベリエであった。



「おぉおぉ、酒に強そうな奴等が来たじゃねぇか。こりゃぁいい祭りになりそうだなぁ!?」



とクロスも、まんざらでもないような表情で力強く頷いた。







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