灰男
□揺るがぬ血潮の中で
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彼女はミランダ・ロットー。
エクソシストだった。かつては。
今は、我らの誇り高き兄弟なのだ。そして所謂、家族なのだ。選ばれし者にしか刻まれぬ刻印を額にしっかりと刻みこんだ、同胞になった。
彼女のノアのメモリーは、畏怖。
彼女はかつてエクソシスだった頃のように優しく脆く。儚い存在ではなくなった。
彼女のノアのメモリーは、かつての仲間のスキンの持つ『怒り』よりも感情の起伏が激しいのだ。
兄弟達には、まるで聖母マリアのように。優しく、時には厳しく律する母のように。
エクソシストには蔑んだ顔で、優しさも慈悲の欠片もない表情で見据える。ミランダは、もう前とは違う存在なのだ。
ミランダは泣かなくなっていたよ。
これもまた、彼女の畏怖のメモリーのおかげなのかもしれないよね。
でもあの仔羊は、まだ壊していないよ。エクソシストをまだ一人も壊してないよ。
自分の持つイノセンスは、もうただの塵にしちゃったけれどね。ハートじゃないのね。残念。って悲しい顔で笑っていた頃が懐かしいね。まだ、他人のイノセンスは壊していないよ。そして他人の命も。
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