〜もう一つの世界〜
□紫のヒト、来たる
1ページ/4ページ
ミサトは、エントリープラグに乗り込んで、ふうと息をついた。
リツコから渡されたカチューシャのような物を、頭に装着させる。
「カチューシャみたい……!」
右側にはモニターのようなものはあるが、今は繋がっていない。
「……信じなきゃ……」
その言葉は、まるで自分自身に言い聞かせているようだった。
外がやけに騒がしい。機械音や水が排出されている音も聞こえる。
『冷却、無事終了!!……ケイジ内、全てドッキング位置!パイロット、エントリープラグ内コックピット位置に着きました!』
『了解しました!!……エントリープラグ、初号機に挿入!!』
明快な声が聞こえたあとに、プラグにも激しい衝撃が走ってくる。
「……激しいな……」
さしずめ、あのエヴァンゲリオンとやらにでも挿入したのだろう。
それを見計らって、メインオペレーターの一人の伊吹マヤがコンピューターを手際よく操作する。
『エントリープラグ、注水!!』
彼女が叫んだ後、プラグ内には赤い色のついた水が入ってきた。勿論、慌てふためいているミサト。
「……な、なにこれッ……!?」
『……心配しないで、ミサト。肺がLCLで満たされれば、直接酸素を取り込んでくれるから!!』
リツコが彼女を落ち着かせるために説明する。しかし、彼女はそんなことはどうだってよかった。
……水責めなんて、どこぞの古風な処刑の方法じゃあるまいし。
「むぐぐッ……!プハッ……!」
ミサトの体をすっぽりと包んだので、仕方なく水を飲み込んだ。
途端に襲ってくる、血の臭い。さすがに、これは気持ちが悪い。
「…………」
途端に、無言になったミサト。なんだかシンジは心配になった。
『み、ミサト。大丈夫かい!?』
「……血の臭い……。血の味がする。……気持ち悪い……!!」
必死に訴えているミサトの顔色は青白く、本当に気分が悪そうだ。
『そんなものは我慢しなさいミサト。すぐに慣れちゃうから!!女の子なんだしすぐ慣れるわよ!』
リツコは、ミサトの必死の訴えを、ピシャリとはね除けていた。
どうやらリツコは、昔のミサト要素を取り入れてしまったらしい。
しかし、彼女の性格も昔とは一切変わらないので、前よりも幾分取っつきやすい性格かもしれない。
シンジには、女だから慣れなければいけない理由はわからない。
「うぅ……。コレが原因で、使徒とやらと戦えなかったら……?」
ミサトは涙目になりながらリツコを軽く睨む。しかし、14歳の睨みに彼女が怯むわけもない。
『貴方は黙ってそこに座っていて頂戴。ノイズが混じるから!!』
シンジも思わず、苦笑を溢した。リツコの性格が素晴らしすぎる。
『……主電源接続、全回路動力伝達しました!!起動スタート!』
オペレーターの指示が聞こえた。
プラグ内には、CONTACTSTARTと英語の文字が現れる。
『A10神経接続、異常なし!!初期コンタクト、全て問題なし!……双方向回線、開きます!』
英文字が消えると、次には何か3D画面を見ているのかと錯覚するような長方形の形が現れた。
「な、なに……?」
ポカンとしたミサトとは裏腹にリツコから安堵の表情が見える。
「すごいわ。シンクロ率42.3%。誤差0.3%以内……。いけるわ」
そう話してから、シンジの顔を見る。彼も力強く頷いて見せた。
「……エヴァンゲリオン初号機ッ!!……発進準備!!」
シンジは力強く叫んだ。そうだ。すべてはここからなのだ。
.