〜もう一つの世界〜
□『イマ』は『現実』
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何かに体を揺らされているような感じがする。人の手のようなモノが自分の肩を揺らしている感覚。
その感覚は、少し気持ちが悪い。
「……う、うわっ……!!」
そして、体全体が激しく揺さぶられる感覚が、シンジを襲った。
「も、もう……なんなんだ!?」
とぶちぶち文句を垂れながら、シンジはようやく夢の世界からの離脱を果たした。彼は座高の高くなった視線で、辺りを見回した。
机と、床にまで乱雑に散らばっている資料に、大量の白紙の数々。
それしか見られなかったので今の揺らされた感覚は気のせいという言葉で処理して大丈夫であろう。
「うわッ、汚いなぁ……!片付けが苦手になっちゃったのかな?」
彼は、苦笑を漏らした。いくらなんでも、自分の執務室である。
執務室ということは確実に、どこかしらには監視カメラという代物が設置されているはずである。
「うーん……。どんな所にもカメラがありそうだからなぁ……!」
いや、たぶんこのNERV本部には全体的に、大量に監視カメラが設置されているとは思うのだが。
なにか不審な動きをしたら即時にバレる。そして片付けができない人間ということもバレてしまう。
「そういえば……ここだけは、綺麗に整頓されてたよな……!!」
そういう自覚があったのか否か、ミサトもこの執務室だけは、きちんと綺麗に整理をしていたのだ。
使徒戦後には、苦情の手紙で卓上がぐちゃぐちゃになっていたが。
「酷い散らかりようだよなぁ……これじゃぁもう、ミサトさんの事を言えないじゃないか……!!」
ぶつくさと言っていたシンジは、床一面の白紙達から顔をあげた。
「どれ……試しに……よっと!」
シンジは、ザッと立ち上がる。
いつも自分の中で、密かにコンプレックスを抱いていた、周りよりやけに違いすぎていたやや小さめすぎる身長……ではなかった。
「や、やばいよ!……めちゃくちゃ高くなってるじゃないか!!」
シンジは喜びの声をあげた。果たして『やばい』とは、誰に向かって叫んだ言葉だったのであろう。
「声だって、低くなってるし!!……若干父さんに似てるけどね」
最後にシンジが嘆いた台詞は、別に気にしないでいただきたい。
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