〜もう一つの世界〜
□僕の選択
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目の前に広がるのは、大海原。
海原とはいっても、色は血のように紅い海が広がっている。小さく盛り上がった陸に、ポツリと佇んでいる二人の少年と少女がいた。
気弱そうな顔つきをした、心優しき少年。名を碇シンジといった。
そして、気が強そうな顔つきをした不器用な少女がいる。名を惣流・アスカ・ラングレーといった。
周りには、この二人以外には人間はいない。シンジは隣にいたアスカの首を絞め、殺してしまった。
ここはかつて、第3新東京市として大いに賑わっていた都市だ。
だがしかし、今となってはその跡形もなく、紅い海にビルやマンションが、半分ほど沈んでいる。
「なんでこんなことに……!!」
とシンジは嘆く。
なぜここが、この様な有り様になってしまったのか。その理由は、サードインパクトにあった。
人類補完計画。
そう呼ばれてきた怪しげな計画。
その内容はシンジを媒介として、サードインパクトを起こし、新しい生物を誕生させるために人類全てを無に還すというものだった。
つまり、体が構築される前の姿に。LCLに還す事が目的だった。
「皆、利用されてたんだ……!」
と、少年は嘆き悲しむ。
その計画には、NERVも利用されていた。大人達も子供達も。そして、その進行に加担していた筈の碇ゲンドウですらである。
シンジはそれを知り、絶望した。自分が無力だと改めて知った。
「ミサトさん……僕は……!!」
家族という存在を与えてくれた女性に救われた。しかしその代償に女性の命は、消えてしまった。
シンジは、砂浜に寝転がる。ジャリッと、嫌な感触が彼を襲った。
「これから……どうしよう……」
シンジのこの嘆きは海の音によって、容易く掻き消されていた。
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