短編小説
□お婿さんとお婿さん?
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木野まことは、凄く焦っていた。
焦っている主な理由。それは、幼馴染みの月野うさぎとのことだ。
どっちも高校生で彼氏彼女もいないので、どうせならクリスマスに一緒に遊ぼうかとなったのだが。
「うさぎはなぁ……。最近女の子と一緒にいるんだよなぁ……!」
とまことはため息をついていた。
うさぎは、まことと同じ高校に通っている。なので嫌でもわかるのだが、うさぎは凄くモテるのだ。
背丈はまことより少し低め。だがやや遅い成長期だったのか、もう少しでまことを抜かす勢いだ。
部活は帰宅部だが運動神経はいいらしく、体育では注目の的だ。
部活にだって引っ張られているほど、彼の運動面は天才的。勉強はまことと同じくらいの力だが。
屈託のない笑顔に、引き締まった体。金髪青目の好、美青年。
「そりゃモテるよなぁ。……うさぎは勉強以外は完璧だし……!」
と、まことは苦笑している。
いつでも沢山の女の子達が、彼のまわりにはぎゅうぎゅうといる。
馴染みなのだが、最近ではちゃんと話せた記憶もないほどだった。
話そうとすると、まわりの女の子達が聞き耳をたてようとするので、気恥ずかしくて話せないのだ。
「というか、もう当日だ……!」
どうするんだ。こんなグダグダなままで来ちゃったじゃないか!?
とまことは頭を抱える。
そう。そのままで、クリスマス当日までズルズルときてしまった。
とりあえずは、一緒に遊ぶのは自分の家だとは決まっているので、あとはケーキを作るだけだ。
「……ふぅ、ただいまぁー!!」
一人暮らしで、ただいまと言っても何も返ってはこないが、まことはこの挨拶は欠かさずしていた。
「おう、おかえり!まこと!!」
まことの家からうさぎが出てきた。まさかの可愛いエプロン付き。
やたらと可愛らしいピンクのフリルがついている理由は、そのエプロンは、まことの物だからだ。
決して、決して。断じてうさぎの趣味がそっち系だからではない。
「……ええ!?う、うさぎどうしたんだよ、その格好はあぁ!?」
と、素早く突っ込むまことに、うさぎは少し苦笑を溢していた。
「あぁ、これは……ケーキを作ったんだよ。でも失敗しちゃったんだよなぁ。まことが帰ってくるまでに作り終わってよかったよ!」
とうさぎは、照れ臭そうに笑った後に、まことにケーキが入った大きめの白い箱を手渡していた。
「ええっと……開けるね……?」
それを開けると、確かに少し不格好だが一生懸命作ったのだろう。
ホールの少し大きめの生クリームのショートケーキが入っていた。
そして、ホワイトチョコのプレートには片仮名で書かれたメリークリスマスの文字。文字も、うさぎがチョコで書いたのだろうか。
「うわ!凄いじゃないか!嬉しいよ……!!というかさぁ、お母さん達は一緒じゃないのかい!?」
と素直に喜んでいたまことだったが、ふっと疑問を覚えていた。
うさぎの家族は、なにかしらの行事の時は団らんを好んでいる。
今回のクリスマスも、家族と一緒に過ごすのだろうと思っていた。
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