シリーズ物
□一人、恐怖の時
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「……ねえねえねえッ!!……月野さんがそこにいるでしょう?」
と、同じクラスから、女子の声が聞こえてきた。そしてその女子は、うさぎの方を指差していた。
「はぁ?月野さん……?確かにいるけどさ。それがどうしたの?」
その女子に話しかけられた女子は、疑問だらけの顔を作っている。
「ほら、この一週間で彼女暗くなったじゃない?その理由が……」
と、最後の部分はうさぎには聞き取れなかった。恐らく、少し小声にでもしたということだろうか。
「えええぇっ!?マジでッ!?」
と、聞かされた女子は、叫びながら、うさぎの方をギョッと見た。
うさぎはうんざりとした様子で、顔は向けず耳だけを傾けていた。
「それが嘘じゃないらしいのよ!月野さん明るかったのに、いきなり暗くなっちゃってさ?なぁんか意外っちゃ意外なのよねぇ!!」
「そーよね!!……じゃ、じゃぁどうやって今暮らしてるの!?」
「それが……ってわけらしいのよ!酷い奴がいたもんよねぇ!?」
「なんというか……さぁ。親がマジで最低だよね、それ……!!」
と、その二人は同情と好奇心が垣間見える眼差しで見つめていた。
数分後にはその女子達は、いつもの様にアイドルの話をし始めた。
それはまるで、今していた会話など、忘れてしまったかのように。
「なんにも分かっちゃいないくせに……。私の気持ちなんて分からないのに。馬鹿みたい……!!」
とうさぎは一人、怒りに歪んでいる顔を、ゆっくりと机に伏せた。
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