捧げ物(裏物)
□潔癖症の変態御指南
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今現在、夜中の2時。
外は真っ暗な闇に覆われている。
世界中がすべて一年中が夏だとはいっても、さすがに夜は寒い。
NERV本部では、普通は誰もいない時間帯である。なのだが、今日は例外の職員が本部にいる。
「い、意外に寒いわね夜は。……というか今は丑三つ時だっけ?」
と、部屋の中で予想外の寒さに体を震わせる女性。葛城ミサトだ。
ミサトは自分の執務室に籠っていた。机には大量の書物やら資料やら。だいたいは苦情の類いだが。
「変な苦情ばっかりだし、全然処理に力が入んないわね……!!」
今日は残業だ。というか終わりそうもないので泊まり込みになる。
だが彼女は別にサボっているわけではない。彼女が受け持っている仕事の量が尋常ではないのだ。
「……ああもう!!一日中やってもやっても終わらない仕事ってなんなのよ。……この仕事量は訴えたらお金を取れるレベルよ!?」
ミサトは散々愚痴をこぼす。同僚のような存在のリツコはさっさと仕事を切り上げ帰ってしまった。
手伝ってと言ったら説教が始まるので、絶対に彼女には言わない。
「ああもう!困ったわねえ。……使える眼鏡君もいないしさあ……」
と彼女は、今は家にいるであろう眼鏡君こと日向のことを考える。
あまりにも酷い言われようだ。
「この時間って嫌に怖いのよ。……前に残業してた整備の子が、幽霊見たって騒ぎを起こしてたし」
整備の女性が見た幽霊というものは、きっとただの見間違いだ。
他の人も周りにいたが、他の人はただの電気の点滅だと言っているし、科学人間のリツコもいた。
彼女が信じるわけもないのだ。
「電気とかよりも怖いのは、すすり泣きなのよ!すすり泣き!!……ヤバい、怖くなってきた……」
とミサトは地味に怖がっていた。自分で言って少しだけ怖くなったのか、サクサクと大量の仕事をいつもの倍の速さで片付け始めた。
「まったくもう!!……あとどれくらいで終わるかしらこれ……」
と弱く息をついた。これでは三時間あっても足らないだろう。少し腹が立ち、大量の資料を恨めしげに睨む。終わった分は二山分。終わっていない分は、五山分。
理不尽だ。実に理不尽だ。
「うっ……ひっく、ひっく……」
「そうそうこれよこれ!!怖いのはこれ!!このすすり泣……き……!!」
ミサトは、短い悲鳴をあげた。
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