小説
□赤く染まれば※
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「そういえば"アレ"はまだ起きてないのか?…ったく、しょうがない奴だな…」
「………起こしてくる」
アレとは双子の兄のことだ。
兄はこの地で生まれ育ったのに魔力が宿らなかった。
いわゆる出来損ないだ。
父はそれを隠すので兄も家を出れない。
"ルイス"
兄の名だ。
意味は"期待"。そんな皮肉な名前を背負わされ、兄もまた16年生きてきた。
俺は長い階段を上り三階の1番隅に向かった。
ノックをせず扉を開けると、兄は窓の外を見ていた。
「なんだよ。起きてんじゃん…」
「あ、レイルあはようッ。」
元気に挨拶をしてくる。
だがおれはそれには同じなかった。
ルイスの部屋は倉庫を改造して作られた小さな部屋。
俺の部屋の四分の一くらいしかない。
「…なんで下りてこないんだよ」
「ぇ?あぁ、…父様がいたみたいだから、機嫌を悪くさせちゃうでしょ?」
「そうだな。朝からルイスなんか見たらそうなるだろうな。」
ルイスは一瞬傷ついた表情になり、すぐに無理矢理笑い下を向く。
俺はどんなに兄が大切でも、決して優しくなんかしなかった。
何故かはわからないけど、一線を引いておきたかった。
「…でも俺がここに来たの、父様が起こしてこいって言ったからなんだけど」
「…っ父様が…?」
何かを恐れてるように目を見開き俺を見た。
「だから行くぞ。」
「…………ぅん」