小説

□変わらないもの
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パチ……パキ…


……パチ…パチ…











俺は、火を見ていた。





ただじーっと。


赤く燃え上がるのを、何も思わずに見つめていた。





「あんたが…ッあんたが…責任取りなさいよ!私…ッ赤ちゃんが…」


「……」




隣で泣いている女の子…花様の背中を優しく撫でた。

しかし俺の顔は、きっと生きて来た中で1番情けない顔をしていると思う。





俺と花様は、ただずっと火を見つめていた。



その火は、花様が殺してしまった軍人を焼いてしまうために、中庭で焚いた。




もう跡形もなく焦げたが、まだ火から手を伸ばしてくるんではないかと、不思議な感覚に襲われた。


と同時に、人間はなんて脆いんだろう…と、深く思った。















俺が花様を助けに行ったあの時、夜の姿が消えた。


本当に、なんの前触れもなく。



頭の中で較差する予想は、どれもマイナスな考えで、そうしているだけで気が滅入ってしまいそうだった。




他の軍人に誘拐されたのか
主人の手の者に誘拐されたのか
もしくは俺の者か


どっちにしても最悪だ。

でも、本当に急な事で消息はまるでわからない。









本当はいないと分かった時、すぐに駆け出しているべきだったのかも知れない。

夜は俺にとって大事な存在だ。
唯一の友達であり、弟のような夜。



でも、頭のどこかで冷静になっていく俺もあった。


――花様をほっておけない――




そうだ。
花様も、俺にとって大切な存在だ。

俺の初恋の相手。



夜の安否と花様の身体、その二つに迷ってしまった俺に心底嫌になった。




そして結局俺は花様についてしまった。




俺はなんて酷い奴なんだろう。


夜は今悲しんでいるだろうか。
生きているだろうか。



そう考えると、俺の胸の1番奥がきゅうきゅうと痛む感覚がした。






 
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