小説

□君のために
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「……もう少しだから、

…もう少しだからね。…ルイス…」


俺はいまだ起きないルイスを、強く抱きしめながら鳥の背中に座り続けた。

もう辺りはすっかり暗闇に包まれ、上空のせいもあってか寒さが肌を痛めた。



それでもルイスを抱きしめ続け、鳥にしがみついた。

















ゴォォオオオォォォ………


「……ッ…」

風だ。
風が強くて目が開けられない。


もう大分鳥に乗って飛んでいるが、だんだんと風の強さが増している。



なびく服を必死でおさえ、鳥に力いっぱいしがみついた。




「貸せ」



「…ッ……え…?」


前方から男の低くたくましい声が聞こえてきた。


「その餓鬼だ。早く」


どうやら声を出しているのは、鳥が声を発しているらしい。

長い間ラスティンクで過ごしたせいなのか、動物が話すのにはたいして驚きはしなかった。



「…っ…いやだ!」


俺は鳥を睨みつけながらルイスをさらに強く抱きしめた。



「別に食ったりしない。
そのうちお前の手がかじかんだら、お前はその餓鬼を落とすぞ。」



……ッ


鳥の言ってる事もあっている。

このままルイスを抱きしめ続けても、いつか力が尽きてしまう。


俺は自分の上着を巻き、鳥が差し出すくちばしに掴ませた。



「…大切なんだ。…だから」


「優しく持ってるよ」



「………ありがとう」


俺ももう力の限界だ。

魔法を使って寒さに堪えてルイスを抱きしめ、手ももうかじかんでしまい力が入らなかった。



俺は鳥の背中に、気を失うように眠りについた。








 
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