小説

□希望と暗闇※
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「えっ!脱走ッ?…ッ!」



「しーっ!うるせーよ」


僕が驚いて声を出したらとっさにウル君に口を塞がれた。
ごめんと言いたかったけど言えないから、困ったように俯いた。


「…みんな寝てるんだから。」


ユウヤくんに言われて思い出した。
みんなはもう寝てる時間だったんだ。

自分がやっちゃった事にまた罪悪感が生まれ、ますます俯いてしまった。




「まぁまぁ…。本題だけど、最高なチャンスだと思わねえ?」




「…チャン…スかぁ…」



やっと口から離してもらえたから、今度は声の大きさにに気をつけながら話した。












アロアが言ってる最高のチャンスっていうのは、今度この施設で開催される試験の事だ。

サクさんが昨日言った事によれば、大人になれたかどうかをテスト?するって。
僕は全然意味がわからなかったけど、とにかくひどい事をされなくてすむなら何でもいいと思った。


アロアはその試験の時、サクさんや他の試験官の目を盗んで逃げ出そうって考えてるんだって。

それで僕にも一緒に逃げ出そうって言ってくれたんだ。
嬉しくてへらへらしちゃったらアロアに変な目で見られちゃった。






「でっ…でも、もし捕まっちゃったらどうするの…?」




「それはしょうがねぇよ。見捨てるとかしないとなっ」


ウル君が元気よく応答してくれたけど、「見捨てる」という言葉を聞いて、底知れぬ不安が募った。




「大丈夫だよ。ムーンは俺が連れてくから」



アロアの言葉で顔を上げとっさにほほ笑んでしまった。







「…ありがとう」





アロアに何か言われたりやってもらったりすると、体がなんだかチクッと熱くなるんだ。


なんだか苦しい気分にもなるけど、そのほわほわしたあったかさが、僕は心地よかった。


アロアは僕より少し年上だし、手も暖かくて、よく冷え症の僕の手をあっためてくれた。





今のこのみんなでいる空間が、幸せでしょうがなかった。



あぁ、ずっと続けばいいのに…って













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