小説部屋

□幸せな世界
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とりあえず…とルークはその場から立ち上がると、先程アッシュが出ていった扉へと手をかけ一度深呼吸してから部屋を出た。
一本道のような廊下を歩き階段を降りると、ふわっと腹をくすぐるいい臭いが漂ってきた。

「あらルーク、ようやく起きたのね。まったくあなたはお寝坊さんなんだから」

そんな風に優しく笑いながらルークの母―シュザンヌは話しかけてくる。

「アッシュは先に済ませてしまいましたよ。さあ、あなたも早く食べてしまいなさい。」

またふんわりと笑うとシュザンヌは休めていた手を再び動かし食器(多分アッシュが使ったものだろう)を洗い始めた。
言われるままにルークは食事の置いてある席に着く。
とても…不思議な気分だった。
云いたいこと、思うことはたくさんある。
けれど、きっとそれは考えるだけ無駄なことなのだ。
もしかしたら、これはローレライからの贈り物なのかもしれない。
ローレライの言っていた「幸せな世界」
それはこのことなのかもしれない。
だったら…とルークは思った。
だったら、今を精一杯楽しく過ごしていこうと。
この生活がいつまで続くか分からないけれど
いつかは醒めてしまう夢かもしれないけれど

(俺は今生きてるんだから!!)

いただきます!と
ルークは声を張り上げ満面の笑みで母の作った料理に手をつけた。

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