小説

□あなたが着れば
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「ねぇリョータはさ、ナース服とメイド服だったら、どっち派?」

幼なじみは突然聞いてきた。

「んー…すげぇミニならナースで。ヤスは?」

俺はメイド服かなーなんて笑って答えるヤスに、なんで?って聞いてみると。

「なんとなく」だと。









時は変わって放課後。
場所も変わって俺の部屋。
人も変わって三井サン。




「ねぇ三井サン」

「…んー?」

愛しのハニーの視線の先は、俺じゃあなくて。

二人きりで夕方、彼氏の部屋にいるっつー、いちゃつくべき状況をまるで無視して。

週バスに夢中な三井サン。


まぁ無防備な表情可愛いからいいけどね。

いいけどね。

…ちょっとは絡みが欲しいのよ。エロチックな意味でなくて。


ふと、幼なじみの質問を思い出す。

「メイド服とナース服なら、どっち好き?」

「はぁ?」


あ、反応してくれた。
…寂しいとかゆーな。


「だからメイドと」
「テメェが着んのか?」





…はい?


「着ねースよ!なんで俺が着る前提!?」

三井サンは苦ーい顔して。
「だよな。気色わりぃ」

なんて失礼っちゃ失礼だけど、最もなことを言った。

俺がナース服とメイド服とか、マジに気色わりぃし。

着てる俺を想像して軽く吐き気がす……
………………
………………!

俺は閃いた。
こーいう考え方もあるのか…!



三井サンが着るなら、どっちだ!?

ナースはエロくて最高だと思う。
薄いピンクの短いスカートから惜しげもなく晒される、三井サンの白くて長いキレーな足。

ナースの健康診断とか言って、聴診器プレイとかイロイロし放題…!
あ、なんかAVちっく。


いやいやメイド服もやべーだろ!
メイドっつったらアレだろ!?
『御奉仕』だろ!?

あの反抗的なお姫サマが俺のことを『御主人様』だろ!?

「…やぎ。おい宮城。」

いやー決めらんねー!
やっぱプレイ的にはナースか?

「…い。おい!」

でもシチュエーション的にはメイドか?
あぁもう寧ろ…!!


どっちも着て下さ『ゴッ!!』

「テメェ聞ーてんのか!」

「いっ……てェすよ三井サン!」

鳩尾に蹴りくらってちょい涙目な俺。

「シカトしやがるからだろーが!何ひとりでにやけてんだ!」

どうやら顔に出てたらしい、俺のピンクな妄想を、三井サンに話してみる。

ナースの健康診断辺りで、顔を真っ赤にして拳を握り締める三井サン。

うん分かってた。
こんな反応だろうなって分かってた。

メイドの『御奉仕』に差し掛かった辺りで、俺はぶん殴られた。

殴られるって分かってた。


「着るわけねーだろこのバカヤロウ!!テメェ頭わいてんじゃねーのか!?」

「なんで!?着てよ!」

「ふざけんな誰が着るか!」

それから10分は。
着て、着ない、お願い着て、死んでも着ないの繰り返し。


いつまでたっても変わりそうのない状況に耐えられなくなって、俺は妥協案を提供した。



「じゃ脱いで。」

俺の言葉に三井サンは一瞬フリーズ。

その隙に三井さんを押し倒す。

何を言われたのか理解して。
それから自分の今の体勢を理解して。

やっと抵抗し始める可愛い人。



「ねぇ三井サン。アンタが着るなら多分俺なんでもエロい妄想できるけどさ」

すんな!と俺の下で三井さんが悲鳴じみた声を上げる。


抵抗を流すように、低めの声で俺はそっと囁く。

「真っ裸のアンタが一番、そそる」

「ーっ!!」

真っ赤な顔で必死に俺を睨むその表情にすっかりヤられて。


抵抗なんか無視してしっかりヤるムードに持ってった。


まぁた後で蹴られるな、なんて思いながら。

愛しい恋人を味わうために、ゆっくりと口づけた。








あなたが着れば、なんでも素敵。

着ないあなたは、もっと素敵。



end

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