結界師
□初日の出
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大晦日からお正月にかけては、皆のんびりと過ごすことだろう。
「結っ!」
でもそれは『人』であって『妖』には全く関係ない。
「滅っ!」
つまり大晦日だろうとなんだろうと俺は『お役目』に勤しまなければいけないということだ。
「良守!そっち行ったよ!」
「分かってるって時音!結っ!」
という訳で、俺は今日も時音達と『お役目』に勤しんでいる。
「甘いな良守!結!」
「あぁ!?」
だが今日はいつもは居ない人物が烏森に来ている。
「な…にすんだ!馬鹿兄貴っ!」
そう…それは俺の兄貴・墨村正守だ。
「良守、昔から周りをよく見ろって言ってるだろ?」
妖を結界で囲んだ瞬間、俺の周りに結界が張られ身動きがとれなくなってしまった。
「うっるさい!早くこの結界解けよ!」
結界を張った張本人を睨みつけるが、兄貴はニヤニヤと笑うばかりで一向に結界を解く気配がない。
「くっそ…滅っ!」
このまま兄貴が結界を解くまで待っていたら妖が変化してしまう恐れがあるのでとりあえず滅っしておく。
「点穴!」
滅した瞬間、時音が空かさず点穴で吸い込む。ナイスアシスト時音。
「おぉ。その判断は正しいな。」
その様子を見ていた兄貴は「少しは成長したんだな。」と嫌みったらしい台詞を吐く。
その台詞にも勿論むかついたが、俺は今日はそれ以外にもむかついている。
「…つーかなんなんだよっ!突然来たと思ったら、俺の邪魔ばっかりしやがってっ!!」
そう…。兄貴は連絡もなしに突如、烏森に現れた挙句、俺が行く先々で邪魔をしてくる。
斑尾や白尾の鼻が利かなくなるように変なもん振りまいたり。
俺の足元に小さな結界を張って転ばせたり。
いきなり背後から近づいてきて驚かされたあげくにプールに落ちるし…おかげで俺は濡れた装束のままいるからかなり寒い。
斑尾や白尾は鼻がもげるとかって言ってさっさと家に戻ったから、今日はいつもの倍、時間が掛かってるし…。
俺は早く終わらせたいってのに。
自分の兄ながら何がしたいのか全く分からない。