薔薇マリ壱

君に出会った4月から…
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「だから彼氏。」

彼氏?僕に?…意味がわからず固まっていると、誰かに肩を抱かれる。

「ん?」

ふっと斜め上をみると漆黒の髪の男がいつのまにか隣に来て肩を抱いていた。

「ソコの半魚人!マリアはボクのだから手出しは無用だヨ」
「「「「「え?」」」」」

男の言葉に多分、僕と教室内にいる生徒たちの全員の声が重なる。そして、次に待っていたのは怒涛の言葉の攻防戦だった。

「ちょっと!アジアン!どういうこと!?」
「なにがだい?ベティ?」
「女に興味ないんじゃないの?」
「誰もそんなこと言ってないヨ!」

ちょっと待て…

「初対面ちゃうんか?なんでそうなんねん!」
「うるさいヨ半漁人!」
「誰が半漁人やぁぁぁぁぁあ!!大体こんな可愛子ちゃん何一人占めしようとしてんねん!!」

っていうかさ…

「アジアンしゃん!いきなり先生に、しちゅれいよ!」
「おぉっと!ユリカくん!とりあえずその手に持っているモップは置いてくれないかナ?」
「…ア…ジアンさんは…変態…です…ね…」
「…キミはさり気なく酷いね…サフィニア…」

…コイツら…さっきから…。

「いい加減にしろ!!」
「「「「「ッ!!!!!???」」」」」

バンッ!!!!!!!と出席簿を教卓に叩きつけ大きな音を出すと騒いでいた生徒たちが一斉にこちらを向く。多分なにが起きたのか解らなかったんだろう。でもそんなことを問題じゃない…。そう…そこじゃない!一番の問題は…

「…僕は女の子じゃない!!!!!!!!!!!!」

コイツら全員が僕を女の子だと思ってることだ!

「「「「「え……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ」!!!!!!!!」」」」」

教室内の生徒が全員、僕の方を向いて絶叫する。いや…全員じゃない…アジアンと呼ばれていた漆黒の男だけは叫びもせずこちらを見ていた。
「解ったら君も変な事は言わないでよね。」

でも次に聞こえてきたのは、僕が予想もしていなかった言葉だった。

「ボクは男だとか女だとか関係なく、マリアがいい」

そう言いながらアジアンは微笑む。まともに顔を見たことがなかったから気づかなかったが、アジアンは透き通るような青い瞳をしていて、その瞳が僕を映していた…。引き込まれそうになるぐらいの綺麗な瞳に反応が遅れたが、ちょっと待て…

「あのね…君は生徒で、僕は先生なんだけど?」

いきなりマリアって…馴れ馴れしいにも程があるでしょ…

「じゃあ二人っきりの時にマリアって呼ぶヨ」
「いやいや…君と二人っきりになることなんてまずないから。」

こいつ…顔はいいけど、かなり頭やられてるんじゃないの?

「つれないネ。マイ・スウィーテスト」
「鳥肌たつからやめてくれる?」
「でも…必ず振り向かせてみせるヨ」
「……………」

この調子で1年間って…大丈夫なんだろうか…。
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