薔薇マリ壱

君に出会った4月から…
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でもその考えは甘かった。僕が生きてきた中で一番甘い考えだった。

「「あ」」

教室に入るなり真っ先に目に入った漆黒の髪の男。男もこちらに気づいたようで声が重なる。まさか運悪く受け持つクラスの生徒だったなんて…。

「…ふっ…まるで運命のようだネ」

男は長ったらしい前髪を意味もなくかき上げ、おぞましいとしかいいようのない言葉を吐く。

「………………………」

超最悪という言葉がここまでぴったりの状況ってないね。でもここで、この男の相手をしているわけにもいかない。そうだ…初日から舐められて堪るもんか!!

「みんな席について!」

教室を見渡し他の生徒にそう言うと「え?先生?」「若くない?」「転校生じゃないの?」などと好き勝手言いながらザワザワしている。まぁこんな反応を返されるのなんて解りきってたけどね。ザワザワと騒ぎながらも生徒全員が席についたのを確認し、教卓に出席簿を置き、スー…と深呼吸する。

「今日から3-3の担任を勤めることになったマリアローズです。卒業までの1年間よろしくね」

教室を見渡し生徒たちの顔を眺める。生徒たちの中には、未だに先生だと信じていないのか怪訝な顔をしている子も居れば、少し顔を赤らめている子も居た。一部関わりたくない奴もいるが、そこはまぁ慣れるかもだしね。しっかりしないと!

「じゃあ出席取るよ」
「はいはーい!先生に質問やねんけど!」

よしっ!と内心、気合を入れなおし、出席簿を開き点呼を取ろうとすると大きく手を上げ大声を出す魚顔の生徒の姿。

「…なに?」

質問って…。まぁ初日のコミュニケーションは大切だしね…。答えれる範囲なら…。

「先生っていくつなん?」
「今年23だよ。大学を卒業したばっかり。」

答えるとまた教室内がザワザワと騒がしくなる。まぁ普通に考えたら新卒の奴が3年の担任になるなんてないしね…。話を貰った瞬間、自分自身も驚いたぐらいだ。

「ほな、次!先生、彼氏はおるん?」
「…は?」

魚顔の生徒の言葉に固まる。
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