薔薇マリ壱
□なりきってみようシリーズ★
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『執事』
深紅の美しい髪が風で舞い、その度に白く透き通るような肌がちらちらと現れる…
あぁ…なんて美しいんだろう…
愛して止まない僕だけの…
「マリアお嬢様」
気高き一輪の赤い薔薇
「アジアン…お嬢様っていうなっていつも言ってるだろ?僕は女の子じゃない…」
この屋敷の当主であるマリアローズ様は女でありながら男として幼少の頃から育てられた…
「申し訳ございません。マリア様」
それと言うのも先代の当主である父君がマリア様を大変溺愛しておられたからだ…。
「ですがいつまでも夜風に当たっていてはお体に障ります。」
女として社交場に出ればこの美しい容姿に男が群れ、マリア様に変な虫がついてしまう。そんな事のないようマリア様を男として育てた
「わかってる…」
その溺愛の行動がマリア様を苦しめているとも知らず…
「ねぇ…アジアン…」
「はい」
先代の当主はお亡くなりになられた…奥様と一緒に。
「僕は…ちゃんと男に見えてるのかな…?」
一人ぼっちになったマリア様は父君の言い付けを守り今も男であり続けようとしている
「不安なんだ…アジアンが…その…時々お嬢様っていったりするから…」
そんなマリア様をボクは傍で守りたいと思った。けなげで…儚くて今にも崩れてしまいそうな小さな体を震わせるマリア様。
「…私の中ではマリア様は幼少の頃よりずっと一人の女の子です」
二人の間に風が音を荒げ吹き通る…まるで僕達を切り裂くかのように
「え…?なに?風で聞こえない…」
いいんです…聞こえなくても
「美しく育ち気品あふれる美しい貴方をどうして愛せずにいられようか…」
これは決して叶うことのない…交じり合うことない運命なのですから。
「愛しているヨ。愛しのマリアローズ」
いい終えた瞬間…まるで何かに操られたように風が嘘のようにやんだ
この気持ちは決して届くことはないのでしょう…でもボクは貴方を守り続ける…例えこの命を失うことになっても。
「ごめん聞こえなかったんだけど…なんていったの?」
「マリア様は立派な紳士だと言ったのですヨ。」
「そ…そっか良かった」
「さぁ…早くお部屋にお戻りください。温かい紅茶を入れますので。」
風がまるで二人を邪魔するかのようにアジアンの声を消した
でもその時のアジアンの顔は…なんだか違って見えた…優しくて温かくて何処か淋しそうな笑顔だった…
『マリア様は立派な紳士だと言ったのですヨ』
多分あれは嘘だ…なんで?どうして嘘つくの?
「……………」
昔から男として育ってきた…自分は女の子じゃないと言い聞かせてもきた。
なのに…育っていくにつれ変わる体形の変化…それと同じように変わる貴方への気持ち…
「アジアン…好き…」
こんなにも…涙が溢れる程好きになってしまっても、この気持ちは決して叶うことはない…
二人は交じり合うことない…主人と執事の関係…
End