薔薇マリ壱
□なりきってみようシリーズ★
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『ホスト』
「やぁ今日も来てくれたんだネ。子猫ちゃん。」
ここは女性が夢のようなひとときを過ごすために訪れるホストクラブ【エルデン】
「君は本当に美しい」
ここはこの街でも人気のホストクラブでたくさんのホスト達がいる。だがその中でも不動のNO1であるのがこの次々に甘々の台詞を女性に囁いている男、アジアン
「キミはこの世で一番美しく儚き気高い一輪の赤い薔薇だ」
そしてこのエルデンでボーイをしている僕、マリアローズはそんな彼と…周りには秘密だが一応付き合っていたりする
「………フンッ……」
実際、付き合って欲しいと言ってきたのはアジアンで…僕はしょうがなくOKしてあげた筈なのに…なんで僕があんな奴にやきもちなんかしなくちゃいけないんだ…
「……超最低…」
この仕事柄こんな場面があるのは至極当たり前のことだ…そんな事はわかっていた筈だし、こんな場面があってもこんなにイライラするなんて思いもしなかった
「……………」
遠くのアジアンがいるテーブルを眺めてみると未だにアジアンは女の子相手に甘い台詞を吐いている
「………バカ…」
それを見ているのが本当に辛くて裏のスタッフルームに入ると自然と涙がでてくる
「…ッ……」
こんな時、なんで自分は女の子じゃないんだろうって思ってしまう。
「………ン…」
解ってる…アジアンは女の子だろうがなんだろうが関係なく僕を好きって言ってくれてるってことぐらい…
「……ア…ン…」
でも…一度不安になってしまった僕の心は真っ暗で…
「……ア…ジアン…」
君を好きになっていく程、僕の心は暗く深く染まっていく
「マリア?」
「ッ!!!??な…!」
いきなりのアジアンの出現に流れ始めた涙が一瞬にして止まってしまった
「…なにしてんの?接客中…でしょ?」
「なにって…マリアがいきなり居なくなったから心配で抜けてきたんだヨ」
アジアンがスタッフルームに入ってきた…その足は真っ直ぐ僕に近づいてきている。
「………で…」
「マリア?」
「来ないで!それ以上近づいてきたら嫌いになるから!来ないで!」
止めて…それ以上近づいてこないで…それ以上僕を見ないで…
「お願い…」
これ以上好きにさせないで…これ以上醜くさせないで…君には知られたくないんだ…こんなにも嫉妬深い僕のことなんて…
「それは無理だよマリア…ボクが世界で一番…否…この世で唯一愛すると決めた人はキミだけなんだからネ」
「…アジアン…」
「キミに嫌われたら…ボクはこの世に生きる意味が失われてしまう…それぐらい愛しているヨ」
あぁ…本当に君は優しいね…いつも僕が欲しい言葉をくれる…不安になっている心が安心感に包まれていく
「…ごめんなさい……」
「大丈夫…本気じゃないことぐらいわかってヨ。それに…やきもちを妬いているマリアはとても可愛かったしネ」
「…バカ…」
マリア…気づいていたかイ?
いつも言っている言葉…
『君は本当に美しい…』
アレはいつもキミを見ながら言っているんだヨ?
『キミはこの世で一番美しく儚き気高い一輪の赤い薔薇だ』
いくら仕事でもこんな言葉…キミ以外に言う訳ないじゃないか
ボクの薔薇はキミだけだ…愛しのマリアローズ
End