薔薇マリ壱
□君に出会った4月から…
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僕が君に初めて会ったのは桜の花びらが舞い落ちる4月だった…
「ちょっと、そこのキミ…」
今日から通うこととなる高校の敷地に足を踏み入れようとした瞬間、在校生であろう漆黒の髪の男に呼び止められる。
「…なに?」
初日からなんなんだ…と溜息交じりに返事を返すと男は上から下まで舐めるように見てくる。正直うざい以外の何者でもない。ここが学校で、この男が生徒でなければ殴っているところだ。
「入学初日から制服を着てこないのは関心しないネ」
舐めるような視線。その後に吐き出された言葉…すべてが癇に触る。
「指定外の服に染髪。キミ今日だけで減点どころか退学処分もいいとこだヨ」
幼さの残る顔。平均よりも小さい身長。少し高めの声。普通は考えられない真紅の髪にオレンジの瞳。そんな自分を考えれば、この男がなんでこんなことを言っているのか解らなくもないが、この男は勘違いしている。
「あのさ…この学校には“教師”にそんな校則がある訳?」
「え」
そう…僕は4月からこの学校の教師として通う立派な“大人”だ。けっして十代でもないし子供でもない。服装云々言われる筋合いなど更々ない。
「…教師…?」
冷たい視線を男に送っていると、男は再度、人の全身を何度も何度も見返し首を傾げる。未だに信じられないんだろうが事実は事実だ。
「後…悪いけど…この髪は生まれつきだから」
そう告げ、僕は踵を返し足早に校舎へと向かった。
「え…ちょ…!」
後ろの方で、男がなにかを言っていたが気にするものか。ああいう男は関わらない方がいいに決まっている。ここは大きな学校だし…運悪く担任になりさえしなければ多分滅多に会わないだろう。
そう思い僕は新しい職場に入った。