薔薇マリ壱

光と闇と月の輝き…
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昔…光の精霊と闇の精霊の絵本を読んだことがある…

光の精霊は漆黒に彩られた闇に惹かれ、闇の精霊は美しく輝く光に惹かれた…

でも所詮住む世界が違うモノ…闇と光は遠くから眺めることしかできず悲しみに明け暮れた。




幼いながらも悲しい話だと思った




「…アジアンは夜が似合うね」

月明かりに照らされる漆黒の髪と硝子のように月明かりを透かす青色の瞳が綺麗だと思った。

だから先程の台詞もなにも考えずに自然に零れた。

「そうかい?」

君は微かに笑うけど…。僕からしたらその仕草がいつもとは違って見えて胸の辺りが少しツキン…と痛くなる。

「うん…」
「…じゃあ」

まるで何かを囁くように音をたてながら風が僕とアジアンの髪をなびかせる。

「マリアは…」
「やめてよ…」

僕はその風に押されるようにアジアンにもたれかかった。

「…それ以上は…言わないでよね…」

…自分でもわかってる…言う言わないはアジアンの自由だ…でも…君にはその先の言葉は言ってほしくないんだ…。

「お願い…」

君が夜で僕は朝。
君が月で僕は太陽。

「お願い…」

君と僕とは住む世界が違うとか…言わないで…

「マリア…」

あぁ…本当に今日の僕はどうしちゃったんだろう…

「……ごめん……」

いつもアジアンに向かって触るな近づくなとか言ってるのに。自分から近づいたり触れたりするなんて…




あの物語を思い出したのも僕が僕らしくいられないのも全部、お前のせいだ…

僕の心を揺れ動かすな…

暗い夜空に明かりを灯す美しい満月め…

END
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