薔薇マリ壱
□僕と彼女が分かれた時
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「マリアンヌ」
夢の中で貴方が僕を呼んでいる…
「マリアンヌ」
僕の嫌いだったもう一つの名で
「マリアンヌ」
「…………」
それでも僕が返事をする事はない…
「マリアンヌ」
しないんじゃない…できないんだ…僕は貴方を裏切った…自分勝手な理由で…
「マリアンヌ」
あんなに優しくしてくれたのに…あんなに僕を想ってくれていたのに…僕はそれが重たく感じて仕方がなかった…
「マリアンヌ」
怪我は良くなりましたか?貴方はあの広い屋敷で今もなお1人でいるんですか?
「マリアンヌ」
あぁ…掛けたい言葉はたくさんあるのに…夢の中でさえ僕は臆病だ…
「マリアンヌ」
お願いその名で呼ばないで…それは僕の名前じゃないんだから…
「マリアンヌ」
ううん…貴方ならその名前で呼んでくれても構わない…貴方の中での僕は『マリアローズ』ではなくて『マリアンヌ』だから。
「マリアンヌ」
彼女は貴方の元に残った…
貴方が少しでも淋しくならないように…少しでも覚えていてもらうために…。
「マリアンヌ」
そして懺悔のために…
「マリアンヌ」
いきなり出ていってごめんなさい…ずっと騙していてごめんなさい…
「マリアンヌ」
そしてありがとう…最後の居場所をくれて…
貴方があの時、僕に声を掛けてくれなかったら僕は彼女と一緒に…彼女を嫌いまま死んでいたかもしれない
「…貴方のおかげで僕は彼女を少し好きになれた…」
「マリアンヌ…?」
早く気付いてあげて…貴方の傍にまだ彼女がいることを
声は聞こえないかもしれない…触れることは叶わないかもしれない…でも彼女の心は今も貴方の元に…
「本当に…ありがとう…」
貴方の胸の中で優しく微笑んでいるから…
End