薔薇マリ壱
□心の中の…
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ひとつ、またひとつ…この心に溜まっているものをなんだろう。
−マリア−
君が僕の名前を呼ぶたびに…
−キミは美しい−
君が僕の事をそういうたびに…
「…アジアン」
胸の中にほわほわとなにかが溜まっていく気がする。それがなんなのかは分からないけど。別に嫌じゃない。どちかというと心地良い気さえする。
胸に手を当てると少し鼓動が早い。
君の事を考えるだけで鼓動はまた早くなる。
今なにしてる?
傍まで来てる?
それともクランの仲間の所?
それともまた別の人の所?
このドアを開けたらいるの?
家の玄関の傍まで行きドアノブに手をかける。居なかったらどうしよう。いやどうもしないけど…。っていうか居る訳ないか…。でも一応見るだけ…
−ガチャッ−
ドアノブを捻りドアを開けると其処には夜の闇が広がっていた。
あぁ今日は新月なのか…。
月の光がない夜は本当に暗い。足元すら見えないこの状況で君がいるかどうかを探すことも困難で踵を返し部屋に戻ろうとドアノブに手をかける。
「…眠れないのかイ?マリア。」
すると割と近くで声が聞こえた。
「…アジアン?」
君の声だと分かっているのにわざと聞いてみる。
「うん。」
君は短く返事をして頬に触れてくる。あぁ…そんなに近くにいたんだ…。
「アジアン」
「どうしたんだイ?」
「…おやすみ」
「あぁ…おやすみマイ スウィーテスト」
それだけで、また心の中にひとつ、またひとつ温かい何かが溜まっていく。
それが恋だと気づいたのはもう少し後の話…。
END