薔薇マリ壱
□5限目
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(暑い…)
2学期が始まって1週間。夏休み中の生活リズムがまだ抜けきれないせいで中々授業にも、みが入らない。
大体にして昼食後の5限目なんて地獄以外の何者でもない。涼しい時期は、お腹がいっぱいで眠い。夏は太陽が天辺にいる所為で気温も高くて最高に暑い。夏にしろ、冬にしろ結局5限目は天敵だ。
「………」
暑さを和らげようとパタパタと下敷きを団扇代わりにしてみるものの、微かにおきる風で余計に暑さを感じた上に腕が疲れただけだった。
「………」
手に持っていた下敷きを机の上に置いてあるノートに敷きこみ黒板に書いている内容を写そうかとシャーペンを手に取ってみたが、教科書通りの事を書いてある黒板の内容を写す気にもなれず、シャーペンを机の上に転がす。
「………」
なにげなく窓の外に視線を向け、体育の授業をしているクラスに目を移すと見慣れた顔がいた。
(あ…アジアンのクラス体育なんだ…)
この学校の生徒会長で、自分の恋人である人物を視線で追いながら、こっち向かないかな…。なんて思っていると不意にアジアンがこちらを向いた。
「…っ…!」
焦って机につっぷして顔を隠す。あまりにもタイミングが良すぎて、まさか自分はテレパシーでも使えるのか?と思ってしまった。
「………」
暫くつっぷしていたが、冷静に考えれば、別に僕を見ていた訳ではない気がする。たまたまこちらを見ていただけだろう…。なんか僕馬鹿みたいだな…と再度運動場に視線を向ける。
案の定アジアンはこちらに背を向けていた。だが、授業を真面目に受けているようでもなく…なにかをしているようだった。授業中になにやってんだか…と呆れながら見ていると、ポケットに入れていた携帯がブブブブッと短く震えた。
「…?」
こんな時間にメールだなんて誰だろう?ユリカやサフィニアは真面目に授業を受けるタイプだし、メルマガかなにかだろうか?と先生に見えないように携帯のメールBOXをあけてみる。
「…っ…」
開けた瞬間、授業中であることも忘れ叫びそうになったのを必死で耐える。
(あの馬鹿っ!)
携帯の画面を見て運動場に視線を向けると背を向けていたアジアンがこちらを見て微笑んでいた。
(後で覚えてろ…!)
携帯の画面には『隠れないで顔見せてマイスウィーテスト』と書かれていた。
「…………」
してやられたようで腹は立つが、どうやって仕返ししてやろう…と思う過ごす5限目もまぁ悪くないなぁと感じてしまい自然に口が弧を描く。
5限目が終わるまであと10分。
END