薔薇マリ壱
□恐雨
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6巡月に入り毎日のように雨、雨、雨…。これじゃ洗濯物も乾かないし、買い物に行く気もおきない…。
「いい加減止んでくれないかな…」
大体にして雨は嫌いだ…。嫌なことばかり思い出す。
「あぁー!!!!もう嫌だ!!!!ジメジメとした湿気の所為で僕の思考回路までおかしくなる!」
こんな時は気分転換に限る。雨の中を行くのは嫌だが、事務所に行ってユリカやサフィニアとケーキや可愛い物の話をして盛り上がろう。
「…ん…?」
偽劫火を腰に差し、いつもの外套を羽織り傘を持ってドアノブに手をかけると何故か嫌な予感がする。
「………」
どうしてこんなにドアを開けてたくないんだろう?
「…き、気のせい、気のせい!まだ思考回路が湿気の所為でおかしいだけだよね!あははっ」
−−ガチャッ…−−
気のせいだと自分に言い聞かせドアを開けると、
「あ、マリア」
嫌な予感の原因が視界いっぱいに入ってきた。本当になんで僕の虫の知らせはよく当たるのかな…。
「………なにしてんの……?」
僕は項垂れながら、人の家の前でずぶ濡れになりながら突っ立て居るアジアンを見据え問いかける。するとアジアンはいつものふざけた態度ではなく、罰の悪そうな顔をして、
「なんでもないヨ」
どう考えても嘘の返事をする。